裁判員裁判で裁かれる川崎中1殺害「少年グループ」独居房の日常

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 凄惨な事件からまもなく1年――。神奈川県川崎市の多摩川河川敷では、あの晩と同じように寒風がススキを揺らしていた。15年2月、上村遼太君(13)=当時=は少年グループによる凶行の犠牲となり、無残にも命を落とした。犯行に及んだ3人の少年たちは独居房に閉じ込められ、裁きの時は刻々と近づいている。

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 イスラム国の処刑を思い起こさせる無慈悲な所業が、“少年事件”の範疇を大きく逸脱していたことは誰の目にも明らかだった。

 実際、少年グループには年明けにも、成人と変わらない裁判が待ち受けている。

 社会部記者によれば、

「横浜家裁は事件の重大性を考慮し、逮捕された少年たちの“逆送”を決定。まもなく横浜地検がリーダー格の少年を殺人罪で、他の2名を傷害致死罪で起訴し、成人の被告人と同じく、公開の場で裁判員裁判を受けることになりました」

 つまり、刑事手続きの面では、もはや少年扱いしないということだ。それは彼らが送る“日常生活”も同じである。

「家裁から逆送の判断が出ると、少年であっても拘置所に収容される。今回の少年たちの身柄も、県内にある拘置施設に置かれています」(同)

 だが一方で、少年ゆえの配慮は残る。実は、彼らには“個室”があてがわれているのだ。少年事件に通じた弁護士が言うには、

「少年法によって、拘置所では成人と分離することが定められているため、少年は“独居房”に収容されます。犯罪に手を染めた少年は、将来を悲観して自暴自棄になることも珍しくありません。そのため、甘い言葉で近づいて来る暴力団関係者や、詐欺グループの勧誘から遠ざける必要があるのです」

■常に1人

 この“接触禁止”は別の場面でも徹底されている。

「独居房の外に出られるのは面会の他に、風呂と運動の時間だけに限られます。ただし、少年は他の未決拘禁者とは隔絶されるため、冬場は週に2回と決められた入浴や、運動も常に1人で行います」

 とは東京拘置所に勤務した経験もある、元刑務官で作家の坂本敏夫氏。

 拘置所内での暮らしについて詳しく尋ねると、

「施設によって違いはありますが、概ね朝7時に起床して、7時半に朝食をとる。昼食が11時50分で、夕食は4時半頃です。米は麦飯ですが、献立は酢豚やフライ、カレーにラーメンなど、一般的な家庭料理と変わらない。また、クリスマスにはケーキが、正月にお餅が出ることもあります」

 深夜まで川崎駅前のゲームセンターや居酒屋にたむろしていた少年たちからすれば、規則正しい生活も家庭料理の味も、“シャバ”では縁遠いものだったに違いない。加えて、

「刑が確定する前なので、1000〜2000円以内であれば、職員に申請して売店でお菓子や日用品も購入できる。『ジャンプ』や『マガジン』といった漫画雑誌を差し入れてもらうことも可能です。ただ、家族の手作りの弁当やお菓子は、成分を点検できないので差し入れられません」(同) 

 家族や友人から隔絶された独居房で、彼らは上村君の人生を奪ったあの晩に思いを馳せるのだろうか。

「ワイド特集 敵もさる者 引っ掻く者」より

週刊新潮 2015年12月31日・2016年1月7日新年特大号掲載

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