「山口組」大分裂で銀座・六本木・赤坂の治安はどう変わるのか?

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 業界再編は、政治やビジネスの世界に限ったわけではなかった。とはいえ、日本最大の暴力団「山口組」の場合、間違いなく、それに血で血を洗う抗争が伴うことになる。一般市民の生活をも巻き込む危険性を孕んでいるわけだが、繁華街の治安はどう変わるのか?

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日本最大の暴力団「山口組」の司忍組長

 突然、仁義なき戦いは幕を開けた。

 8月27日、山口組は、直系組長である井上邦雄・山健組組長や入江禎・宅見組組長ら13人に対し、絶縁、破門処分を行った。

 捜査幹部によれば、

「その日、13人の組長らは山口組を脱退し、“神戸山口組”と称する新団体を発足。そのトップに井上組長を据え、“仮杯”を交わしている。代紋は本家山口組と同じく、山菱を使用し、その真ん中に“神戸”の文字が入ると言われています。つまりは、自分たちこそが保守本流の山口組であると標榜しているのです」

 直系組織72団体のうち13団体が反旗を翻すという、大規模な内部分裂に至った原因は何だったのか。

 山口組関係者が明かす。

「弘道会の司忍組長が6代目を継いでから、とりわけカネの締め付けが厳しくなった。直系組長は月100万円前後の上納金に加え、総本部から送られてくるミネラルウォーターや石鹸などを購入しなければならない。他にも、例えば弘道会の組員が起こしたキャバクラ放火事件で、死亡した従業員の遺族に対する賠償金も他の直系組長で分担するように求められる有り様。弘道会に権力が一極集中し、その本拠地である名古屋に、山口組の総本部を移すという計画さえ持ち上がっていた」

 もはや、積もり積もった不満が爆発するのは時間の問題だったという。

■シマは店ごと

 警察庁の発表によれば、山口組の組員は約1万300人。そのうち、山健組は約2000人が属する最大組織だった。今回脱退した13団体を合わせると、組員の数は4000人にも達するという。

 まさしく、組織を二分するクーデターだっただけに、一般市民にも影響が及ばないわけがない。

「暴排条例の施行以降、暴力団が繁華街の店から大っぴらにみかじめ料を徴収することはできなくなってはいますが……」

 と、暴力団に詳しいノンフィクション作家の溝口敦氏が解説する。

「それでも、クラブやキャバクラではいまも支払いに応じているところもあるし、ましてや、法律の外側で営業するアングラカジノや風俗店などはトラブル処理を警察に相談するわけにはいかず、暴力団に頼らざるを得ない。現在、銀座や六本木、赤坂にしろ、暴力団のシマ(縄張り)は地域ではなく、店ごとに分かれています。これから、山口組が押さえているシマの分捕り合戦が始まる可能性が高い」

 むろん、東京に限らず、大阪ではミナミやキタ、神戸でも三宮や福原などで、山口組と神戸山口組がせめぎ合うことになるという。

 一般市民が抗争の巻き添えになる恐怖は、刻一刻と迫りつつある。

「ワイド特集 祇園精舎の鐘の声」より

週刊新潮 2015年9月10号掲載

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