専門家に聞く「熱中症」「夏バテ」を防ぐ最新常識 「“縁側にたらい”は雰囲気だけ」

ドクター新潮 医療 熱中症

  • ブックマーク

Advertisement

 幸田露伴に『太郎坊』という短編小説がある。

〈見るさえまばゆかった雲の峰は風に吹き崩されて夕方の空が青みわたると、真夏とはいいながらお日様の傾くに連れてさすがに凌ぎよくなる〉

 と冒頭にあるその夜、仕事から帰った主人は、庭に打ち水をして湯につかる。茹蛸(ゆでだこ)のようになって戻ると、細君が燗徳利を持ってくる。

 太郎坊とは主人が大事にする猪口の愛称。叶わなかったかつての恋愛にちなんでいる。――それはさておき、これは明治33(1900)年に書かれた作品だから、かれこれ115年が経過したということになる。21世紀を生きる我々の部屋にはクーラーが、浴室にはシャワーがある。打ち水をして湯につかり、熱燗をたしなむといった習慣からは遠く離れた。旧来からの習慣には暑い夏を乗り切るための知恵が詰まっているものの、現代の専門家からみると必ずしも正しいと言えない習慣もあるようだ。熱中症や夏バテを防ぐための最新常識を専門家に聞いた。

次ページ:■熱中症を防ぐには

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。