「美人レスラー」を顔の形が変わるまで殴った「ヤンキーレスラー」

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 プロレスだけでなく、興行の世界には「暗黙の了解」が存在する。だが、2月22日に行われた女子プロレス「スターダム」のタイトル戦では、チャンピオンの世IV虎(よしこ)(21)が大暴走。挑戦者の安川惡斗(あくと)(28)を顔の形が変わるまで殴るという異常事態が起きた。観戦していた客は困惑するやら、怒り出すやら……。

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 現在、女子プロレスは10以上の団体があるが、スターダムは人気No.1だという。

 世IV虎は身長160センチ、体重75キロの金髪娘。“スターダムの女番長”の名の通り、東京下町出身の元ヤンキーである。取材したプロレスライターによれば、

「異変が起きたのは、試合開始直後のこと。両者、リング中央で30秒ほど睨みあった後、惡斗が右フックを放った。これに世IV虎がパンチで反撃。すぐに世IV虎の一方的な展開に。馬乗りになって殴り続け、惡斗の鼻からは夥(おびただ)しい量の血が出た。会場は騒然となり、お客からは“プロレスをやってくれ”という野次が飛ぶ始末でした」

 結果は、7分45秒で世IV虎のTKO勝ち。病院送りとなった惡斗の顔は腫れ上がり、頬骨と鼻骨、左眼窩底の骨折、両目の網膜振盪症と診断されたのだ。

 惡斗は、今月、自伝映画が公開されるなど、女優の活動も行う異色の美人レスラーだが、

「2人の不仲は、業界でも有名でした」

 とは、ある関係者。

「世IV虎は、ああ見えて普段は礼儀正しく練習熱心。実力派のレスラーです。惡斗は昨年、病気や白内障の手術で長期欠場し、実力もイマイチ。世IV虎は、明らかに格下の惡斗が『なんで自分と同じようにメインイベンターとして扱われるんだ』と不満を漏らしていた」

 先のライターが続ける。

「スターダムは、彼女たちの不仲を把握していたわけだからね。団体とすれば、因縁の対決ということで、多少喧嘩マッチになっても良いと思っていたのかもしれません。だったら、試合前に打ち合せをしなきゃ」

千載一遇のチャンス

 悪役で知られた、元女子プロレスラーのブル中野は言う。

「私の現役時代は、練習の段階で相手をギリギリまで追い込んだもの。本気の喧嘩に発展することもよくあった。そうすることによって、これ以上やると相手が怪我するとか、危ないとかを学びます。だからこそ、試合では絶妙な力加減で戦えるのです。その経験がない故に、ここまでの事態になってしまったのかもしれません」

 むろん試合では、相手の好き嫌いは関係ないそうで、

「自分と相手のキャラクター、そして相手の身体を通じ、観客と戦うのが本来のプロレス。今回は結果的にお客さんを蔑(ないがし)ろにした。団体側も、本当に2人を戦わせていいかの判断も含め管理すべきだった。今回の件は、世IV虎と惡斗、団体の信頼関係構築と管理の甘さが招いた結果といえます」(同)

 もっとも、あるプロモーターは、

「プロレスなんだから、これを千載一遇のチャンスと考えなきゃ。世IV虎はこのままスターダムにはいづらいだろうから、他の団体に移籍させる。その上で、3~4カ月以内に2人の再戦を仕掛けるね。こりゃ、かなり盛り上がるよ」

 プロレスとは、やはり虚実皮膜の世界である。

週刊新潮 2015年3月12日号掲載

「ワイド特集 木の芽時の夢うつつ」より

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