人気アナウンサーの初の書き下ろしエッセイ/『ウドウロク』有働由美子

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 一風変わったカタカナのタイトルを逆さまに読むと、クロウドウ。即ち、「クロ」い有働。著者が職場の仲間から呼ばれているニックネームだという。

 NHKの朝の番組「あさイチ」のキャスターを務める著者は、その歯に衣着せぬコメントが持ち味で、品行方正だが無機質といったNHKのアナウンサーにあって異彩を放っている。例えば、世界的に名の知られた現代美術のアーティスト、村上隆氏に向かって、「私たちでも描けそうな絵が、何億円にもなるというのは、計算されて描かれているんですか?」と尋ねたり、「ビールの苦さが苦手ぇ」という若い女性のインタビューに「かわい子ぶりっこしてるだけだって」とコメントするといった按配。視聴者に媚びないズバリ本音の応対が新鮮だ。鹿児島生まれで、関西地方屈指のお嬢さん大学を経てNHK入りした著者だが、この地で強力な「ツッコミ力」を体得したようだ。本書はそんな著者が、自分が経験した紅白歌合戦の舞台裏やNY特派員時代のエピソード、家族や友人との人間関係、日々の溜め息などを、四十歳を過ぎて綴った初めてのエッセイ集である。

 好きだった人に、「男社会で長く生き過ぎ」と言われ激しく傷つく繊細さ。視聴者から「さりげないほどほどの美貌」と言われ、「人生トータルで見ると、得」と納得する冷静さ。見合いを繰り返したあげく、ようやく巡り合った理想の相手を「素敵すぎて、自分では釣り合わないんじゃないか」と断ってしまう小心さ……。著者は懸命に仕事をこなす傍ら、独身生活の孤独も見つめる。

 本書が、タレント女子アナたちの自慢本と違うのは、著者が、なによりも自分自身にツッコミを入れることを忘れない理性の持ち主であるというところだ。男社会との戦いに日々奮闘し、悩み揺れ動く心理を率直に吐露した本書は、世のアラフォー世代の独身キャリアウーマンたちの熱い共感を得るに違いない。

[評者]山村杳樹(ライター)