優秀な部下が育つ3つのルール ビジネスで使える応用行動分析とは?

仕事術

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 部下を持つ上司の皆さん、年若い部下のこんな様子に歯がゆい思いをすることはありませんか?

「仕事の意義を説明しても満足に動いてくれない」
「失敗を恐れ、自ら動こうとしない」
「小さな仕事にやる気をみせない」

 これらはどこの職場にもよくある光景です。未熟で仕事に慣れていない部下のなかには、経験を積んだ皆さんの立場からすると、なんでこんなことができないの? と思うことや、どうしてそんなやり方をしちゃうかな、と呆れるようなやり方をしてしまう人もいます。そのような部下をどうやって育ててゆけばよいのでしょうか。

 重度の自閉症の娘にコミュニケーションのてほどきをし、その様子を『リカと3つのルール―自閉症の少女がことばを話すまで―』(新潮社刊)として上梓したコンサルタントの東条健一氏は、アメリカで広まっている自閉症の治療法“応用行動分析”をビジネスでも使える方法を提唱しています。

●ふつうの人も自閉症の特徴を持っている

 自閉症とは、幼児のころに発症する脳や神経の重い障害です。コミュニケーションに重大な障害があり、社会的自立はきわめて困難な自閉症患者にことばや行動を覚えさせるためのプログラム、それが応用行動分析です。

 東条さんは、自閉症の患者さんが見せる、驚くような行動(手のひらをひらひらさせる、体を揺らす、頭を打ち付ける等)を、一般の人の“癖”と変わらないと語ります。“癖”というのは専門的な言い方では“自己刺激”という自閉症の特徴で、一般の人と自閉症患者は自閉症因子のグラデーションの濃淡にすぎず、部下を育てるときも応用行動分析が活用できるというのです。

「応用行動分析は学習科学ですから、ふつうの大人にも効果があるんです。学生はもちろん、主婦やビジネスマンでもだれでもコミュニケーション能力を高めることが可能です」

 また自閉症の仲間である「発達障害」や「アスペルガー症候群」の傾向がある人も多く、アメリカのシリコンバレーで働くITエンジニアのうち約25%にその傾向が見られ、「シリコンバレー症候群」とも呼ばれるほど身近なテーマです。彼らの活用法次第で会社の業績は大きく変わります。自閉症のケアは「出来ない人をできるようにする技術」ですから、仕事に応用すれば非常にパフォーマンスがあがります。

●コミュニケーションをする上で必要な3つのルール

 では具体的にどのように応用行動分析を使えばよいのでしょう。東条さんは応用行動分析を利用した3つのルールで部下を育てる方法を提唱しています。

(1)はっきりと指示をだす
「まず一つ目は、“明確な指示出し”です。簡潔で無駄のない指示をすることで部下にやってほしいことがストレートに伝わります。不必要な説明を省くことで、部下が能動的に動いてくれるのです」

 自閉症患者には、説明しても言うことがなかなか伝わりません。椅子に座って欲しいときは、はっきりと「座って!」と必要な指示を繰り返すことで認知してもらえるようになります。

(2)失敗させない
「二つ目は、“失敗させない”ことです。自閉症患者は指示を出しても言うとおりに動いてくれません。ここでは『プロンプト』という、成功に導くための方法を使います。ことばがわからなくても、身体を手取り足取り動かし、正解に導くことで学習させることができる。健常者においても失敗を重ねると、苦手意識を感じてしまい、自然と失敗した仕事を避けるようになります」

 指示を出したら、成功へ導くためにフォローして成功体験を作らせる。この体験を積み重ねることで、将来的に部下が自分から動き始めてくれると東条氏は言います。

(3)すぐに褒める
「三つ目は、“すぐに褒める”ことです。部下のちょっとした工夫や成果を見逃してしまうと、部下は自分の努力を無視されたと思います。応用行動分析では『強化』という言葉を使いますが、褒めることで自閉症患者に望ましい行動をしたと認知させる目的があるのです。成果の大小ではなく、やったことに対し、きちんと評価してあげることで、上司への信頼度が増すばかりか、他の部員への良い影響にも繋がります」

 東条氏は最後に、「部下に信頼され、人を動かせる上司になるには、思いやりと感謝というシンプルなことに尽きるのかもしれない」と加えて、コミュニケーションの重要性を教えてくれました。

デイリー新潮編集部