「怒り」を表明できないと悪循環に陥る 得する「怒り方」とは

仕事術 2018年2月5日掲載

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「これを明日までにやっておいてくれ。君ならできる!」退社時刻直前に、明らかに残業しないと終わらない量の仕事を渡してくる上司。いつも無茶ぶりの仕事の指示が頭にくる――。

 このような怒りを感じたことき、あなたはきちんと「怒る」ことができているだろうか。「いい人」が良しとされがちな日本社会では、「怒る」ことは悪いことだと思うむきも多いだろう。しかし、精神科医の片田珠美先生は、著書『怒れない人は損をする!―人生を好転させる上手な怒りの伝え方―』の中で、正しく「怒る」ことが、事態を好転させると語っている。では、正しく「怒る」ためには何が必要なのか。片田先生の解説をみてみよう。(以下、同書より抜粋)

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 確かに、私たちは怒りを表明することに慣れていません。そんな感情を抱いた自分を責めて、怒りを呑みこんでしまう、という人も多いようです。けれども怒りを表明しなければ、何度も同じようなことをされ、ますます怒りが蓄積していくという悪循環に陥るだけなのです。
 では、怒りを感じたその都度、言い返すことのできる、反射神経の良い人になればよいのでしょうか。こちらはこちらで問題があります。自分はスッとするかもしれませんが、周囲からは「すぐに感情的になる」などとマイナスのレッテルを貼られてしまう可能性があります。

 そこで、私が長年の臨床経験を通して見出した、「怒りの3ステップ」という法則をお教えします。
 これによって、他人から「あいつは怒りっぽく、感情的だ」などと言われることなく、誰でも自分の感じた怒りをきちんと表明できるようになるのです。

ステップ1:怒りの自覚
 怒りを否定せず、受け入れてください。怒りというのは誰の心にもあるものだから、あって当然なのだと向き合ってください。それが怒りの自覚です。
 
ステップ2:怒りの分析
 なぜ自分が怒っているのかということを分析してください。怒りを自覚したあと、その怒りを次の三つに分類して、どれに当てはまりそうか考えてみてください。
①自尊心が傷ついたとき
②自分の利益が侵害されたとき
③「わかりあえなさ」を感じているとき

 怒りを分類してみることで、自分の怒りを客観的に見つめることができ、なぜ自分が怒っているかがわかりやすくなります。また、理不尽に怒り狂う「怒りモンスター」にならずにすみます。
 自尊心は自分を認め、自信を持って生きてゆくために必要です。ふくらみすぎた自己愛は自分も周囲も苦しめますが、適切な自己愛から生まれる自尊心は、自分を大事にできるようになるのに役立ちます。認めてもらえず、こうした自尊心を傷つけられていると感じるとき、人は怒りを感じます。
 また、自分の利益が侵害されたとき、たとえば当然得られるはずのものが得られない場合にも、怒りを感じます。
 さらに、相手と思いがすれ違い、「わかりあえない」と思うとき、人は怒りを感じることがあります。

ステップ3:怒りの表明
 快感原則(人が快感を求めて苦痛を避け、本能的な衝動のままに、即時的、直接的に満足を得ようとする心理状態。つまり、怒りを感じたままに表明し、気持ちをすっきりさせること)と現実原則(現実との適合を図るため、状況によって快感原則を封じこめ、たとえ不快であっても現実に従おうとする心理状態。つまり、怒りを感じたら、自分の損得を考えて怒りを表明するかどうかを判断し、なるべく損しないようにすること)をはかりにかけて、怒りを表明するのかしないのかを決めてください。そして、表明すると決めたら、自分の得になるように表明しましょう。

 この「怒りの3ステップ」に従えば、誰でも簡単に、怒りを有効に使うことができます。

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 片田先生は、「コツさえつかめば簡単に、しかも自己嫌悪に陥ることなく、怒りを『表明できる』ようになります。そうすれば自分に嘘をつかなくてすみますし、怒るべきタイミングを逃して悔しい思いをすることも減り、ストレスも減ります。『正しいタイミングと方法で怒りを表すこと』は、あなたに大きな得を運んでくるのです」と語る。

 ちなみに冒頭で紹介した上司の無茶ぶりに対しては、「今Aの件も急ぎ進行中なので、明日までには難しいのですが、今週末までではいかがでしょうか」などと、妥協点を見つけて交渉するのがよいと片田先生はアドバイスする。

 無理に怒りを抑え込んで、「いい人」になろうとせず、たまには「怒り」を正しく表現することも大切だろう。

デイリー新潮編集部