「ネットで炎上が起きやすい理由」を脳の専門家が読み解く

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 相手のメールの文面で、何となくムカついた、カンに障ったという経験は誰にでもあるのではないだろうか。

 特にモメるような要素がないはずのやり取りなのに、相手のちょっとした物言いが、どこかおかしい、といったケースだ。

「私はよく理解できませんが、そちらがそれでいいというのなら構いません」

 こんな文面を読むと、居丈高に感じられたり、相手が怒っているように思えたりする。ところが、トラブル覚悟で、その相手と電話や対面で話してみると、まったく何の問題もなく、和やかに話が進むこともまた珍しくない。

 この程度の誤解ならば、笑い話で済むのだが、実際にはより深刻なケースも増えている。ネット関連のトラブルは増える一方だ。「炎上」は日々発生しているし、ある殺人事件の背景としてLINEとの関係が指摘されたこともあった。

 なぜこのようなことが起きるのか。この問題を、脳の観点から解説しているのが、『社会脳とは何か』(新潮新書)の著者、千住淳氏だ。「社会脳」とは、人間関係、教育等々、社会的な問題を解く脳の働きのこと。千住氏は現在、ロンドン大学で社会脳研究に取り組んでいる研究者である。

 同書の中で、ネットでトラブルが起きやすい理由を、千住氏は次のように解説している。

「相手の視線や表情、しぐさや声の抑揚などの情報を素早く読み取り、自発的に反応する社会脳の働きは、普段意識している以上に、他者との関わりやコミュニケーションに大きな役割を果たしている可能性もあります。

 例えば、インターネットやメール、ソーシャルネットワークなどを介したコミュニケーションで誤解や行き違いが生じやすいのは、相手の顔が見えず、声も聞えないため、私たちが普段意識せずに使っている、相手の視線や表情、自分の動きに対する相手の反応などの情報が使えないことによるのかもしれません」

 つまり、対面で普通に得ている情報が、ネットではカットされてしまうため、トラブルにつながってしまう可能性があるというのだ。同書によれば、ヒトの脳は、体重の2パーセントに過ぎないのに、体全体が使うエネルギーの20%をも使うという。生物としては燃費が悪いといえば悪いのだけれども、その分、「他人に気を使う」ためにエネルギーを費やしているとも言えそうだ。

デイリー新潮編集部

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