「佐渡裕」と福岡の中高生が難曲「第九」に挑む映画「キセキの第九」…世界的指揮者が生徒たちに提示した「3つの条件」とは

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“世界のマエストロ”佐渡裕さんといえば、毎年12月の《サントリー1万人の第九》の指揮を務めることで知られるが、今年は同じ時期に“主演”映画の公開も重なることに。映画は、佐渡さんが福岡県の高校の生徒と交わしたある約束をめぐっておきた、数々の奇跡を描いた秀作。プロでも演奏が難しい第九に挑んだ、感動の記録である。(前後編の後編)

偶然の出会いが

 2018年5月のこと。佐渡さんは、音楽監督をつとめていたウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団の日本ツアーで、九州にいた。そのオフ日に、知人が館主を務めるギャラリーのイベントでトークショーをするため、福岡県行橋市を訪れた。

「そこで、地元の福岡県立育徳館中学校・高等学校のオーケストラ部が、歓迎演奏をしてくれたんです。その曲が、なんとブラームスの交響曲第1番(笑)。ふつうは、《カルメン》とか《祝典序曲》などの明るくて短い曲でしょう。なのに第4楽章をまるごと演奏してくれるんですよ。ところがこれが、お世辞にも上手とはいえない演奏で……(笑)。思わず、トークショーの開始を後回しにして、その場で指揮台に立って、練習をはじめちゃったんです。すると、とたんに生徒たちの目つきや表情が変わり始めて、どんどん音がよくなっていくんですよ」

 実は佐渡さんは、兵庫県立芸術文化センターで〈スーパーキッズ・オーケストラ〉を組織・指揮したり、各地でバンドクリニックを行なうなど、中高生たちに触れる機会が多い。

「ティーンエイジャーの時期はとても重要で、おとなには想像もつかないような発想で奇跡を起こせる、人生でもっとも大切なときだと思っています。それだけに、育徳館の生徒たちがみるみるうちに変わっていくのを見て、『次に九州に来たら、必ず寄って、また練習を見てあげる』と、約束していました」

 この“約束”が、6年間の時を超えて、ある大きな奇跡をおこすことになるのだが、その最初の出会いの様子を、KBC九州朝日放送が取材して映像におさめていた。当初は“世界のマエストロ”が行橋市を訪れたという、ニュース報道の予定だった。ところが予想以上に大きな展開になりそうだと、以後、同社が密着取材をつづけ、後にTVドキュメンタリーとして放映された。それらを今回映画化したのが、「キセキの第九」(臼井賢一郎監督)である。

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