「思春期の女子は、特に警戒が必要」 子どもの「SNS依存」で自殺、自傷行為が増加… 対策のためにできる「4つのこと」とは
【前後編の後編/前編からの続き】
いま、世界各国で若年層のSNS利用を規制する動きが広がっている。日本もこの流れに無縁ではなかろう。SNSが若者に与える影響を研究し、世界的ベストセラー『不安の世代』を著した社会心理学者でニューヨーク大学教授のジョナサン・ハイト氏に話を聞いた。
***
【写真】A子さんが持参してくれたおびただしい量の「脱法大麻製品」。本物さながらの“ジョイント”も。リキッドは使い切ってカラに……。「どれがHH……でどれがTH……なのか、もはや分からない」
〈前編では、性的脅迫に薬物売買など、子どものSNS利用に潜むリスクについて報じた。〉
“SNSの利用そのものによるメンタルヘルスの悪化”もあります。
これまでの研究上の論争は、この害に集中してきました。
私たちの研究グループは、SNSが子どものメンタルヘルスを損なうことを示す七つの異なる証拠を整理しています。
実験、SNS企業から流出した資料など異なる証拠が積み上がっています。
それぞれの証拠に弱点はあっても、さまざまな証拠が同じ傾向を指していれば、SNSの利用と子どものメンタルヘルスの悪化に相関関係があると考える根拠は強くなります。
SNS企業に十分な責任を負わせることができないままきてしまったという、アメリカに特有の事情もあります。
通常、先進的な資本主義社会では企業の技術革新を促す一方、設計の悪い製品が人を傷つければ、訴訟や規制というフィードバックが働きます。
ところがアメリカでは、1996年に成立した通信品位法第230条によって、利用者が投稿した内容についてSNS企業の法的責任を問うことが難しくなりました。
企業は事実上、責任追及を免れたまま子どもの“注意”を奪うことを競い合いました。
子どもを依存させる仕組みをつくり、その危険性を知りながら隠し、社会に対して事実をゆがめてきた。これが私の見方です。
アメリカでSNS企業が、70~80年代のたばこ会社になぞらえられるのは、そのためです。
とりわけMeta、Snapchat、TikTok の責任は重いと考えています。生物学的な原因を除けば、これほど大規模に子どもを傷つけた存在は他にほとんどありません。
10代、20代の自殺死亡率は横ばいから上昇傾向で推移
では、日本の場合はどうか。もっとも、日本を欧米と全く同じ物語で説明することには、慎重であるべきです。
日本では2012~13年ごろに、欧米と同じような若者のメンタルヘルス悪化の急増は確認されませんでした。日本には以前から若者の自殺やいじめという深刻な問題がありますが、少なくとも10年代初めには欧米と同じ大きな上昇は見られなかった。日本で起きていることは、時間軸が違うのです。
〈ハイト氏と、共同研究者であるカーメン・フイ・ジン・リム研究員、心理学者ラヴィ・アイヤー氏の三氏が進める新たな共同研究では、警察庁などの公的データを基に、日本と韓国の若者の自殺や自傷行為の推移を分析している。その研究資料からは、日本ではむしろ“時計の針が遅れて動き始めた”可能性が浮かび上がる。
日本での自殺者数は長期的には減少している。25年には1万9188人となり、現在の統計が始まって以来、初めて2万人を下回った。
ところが、10代、20代の自殺死亡率は横ばいから上昇傾向で推移している。24年には10~39歳の各年齢階級において自殺が死因第1位となった。〉
[1/2ページ]


