性的脅迫に薬物売買、大量のポルノ… 「SNSほど子どもに有害なものはない」 世界的ベストセラー作家が語る

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成長に欠かせない経験が削られ……

 SNSが子どもに与える害を、私は大きく三つの“バケツ”に分けています。

 第一は“機会費用”です。有害な投稿を一つも見なかったとしても、画面に奪われた時間そのものが子どもから何かを奪います。アメリカの10代は、TikTok やYouTube を含むSNSに、1日平均でおよそ5時間を費やしています。13、14歳の約4人に1人が、1日7時間以上使っているという調査もあります。

『不安の世代』では、この“機会費用”がもたらす四つの根本的な害を挙げました。社会的な経験の剥奪、睡眠不足、注意の断片化、そして依存です。

 この四つは別々に起きるのではありません。夜遅くまでSNSの画面をスクロールすれば睡眠時間を失い、翌日の集中力が落ち、対面の会話が減り、さらにSNSに逃げ込む。互いに強め合う循環になります。

 仮に子どもが毎晩30分ずつ睡眠時間を失い、それが子ども時代を通じて続いたらどうなるでしょうか。発達途上の脳と身体にとって、非常に深刻なことです。

 失われるのは睡眠時間だけではありません。

 友達と交流すること。匂いを感じること。走ること。日光を浴びること。顔を見て会話すること。失敗し、仲直りし、自分で問題を解決すること。

 そうした人間の成長に欠かせない経験が削られていく。ただ座り、ただスクロールする。それだけでも、若者の幸福感が低下し、精神的不調が増えたことのかなりの部分を説明できるでしょう。

性的脅迫に薬物の売買

“直接的な被害”もあります。

 毎年、膨大な人数の10代が、性的脅迫、いわゆる“セクストーション”の標的になっています。裸の画像などを送らせ、それを公開すると脅して金銭を要求する犯罪です。

 被害に遭った子どもは、激しい恐怖と羞恥に襲われます。アメリカでは性的脅迫を受けた少年が、その日のうちに自殺し、後にFBIの捜査でセクストーションが原因だったと確認されたケースが数十件あります。

 実際の被害は、それよりはるかに多いと考えられます。とりわけ Snapchat のように写真や動画、メッセージが消えるサービスでは証拠が残らず、遺族にも原因が分からないことが多いからです。

 薬物の売買もあります。子どもが Snapchat で買った薬物にフェンタニル(麻薬性鎮痛薬)が混入していて、命を落とす。性的脅迫者、薬物の売人、性犯罪者、人身取引に関わる者たちに子どもが直接つながってしまうのです。

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 後編では、子どもの「SNS依存」を防ぐために親ができる「四つの対策」について報じる。

ジョナサン・ハイト
ニューヨーク大学スターン経営大学院教授の社会心理学者。2024年に米国で出版した著書『不安な世代』はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーランキングで第1位を獲得した。同書は各国のSNS規制に影響を与えている。

週刊新潮 2026年10月29日・11月5日号掲載

特別読物「規制のきっかけを作った世界的ベストセラー作家の告白 『SNSほど大規模に子どもを傷つけた存在は他にない』」より

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