性的脅迫に薬物売買、大量のポルノ… 「SNSほど子どもに有害なものはない」 世界的ベストセラー作家が語る

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自傷行為の増加

 これは偶然ではありません。

 現在、SNSの過度な利用とうつ、不安、摂食障害との関係を直接示す研究は数多くあります。とりわけ大きいのが、10代の女子への影響です。心理学的な研究の結果や、SNS企業から流出した資料など、さまざまな証拠が同じ傾向を示しています。

 若者のメンタルヘルスの悪化については、08年の世界金融危機が原因だという説明もあります。しかし、その影響は12年、13年ごろにはすでに峠を越えており、その後の急激な悪化を説明できません。

〈ハイト氏は『不安の世代』で、米疾病予防管理センター(CDC)などの統計を引き、アメリカでは10年から21年にかけて、10~14歳女子の自殺率が167%上昇したと指摘している。男子の上昇率は91%だった。自殺率そのものはなお男子の方が高いものの、女子の増加率が突出しているのである。

 自傷行為でも同様だ。自らを傷つけ、緊急治療室で治療を受けた10~14歳の女子の割合は、10年から20年までに約3倍となった。

 変化はアメリカだけのものではない。イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでも10年代初めから、若い女性の不安、うつ、自傷行為の増加が確認されたという。〉

ゲーム、ポルノ、賭博が与える終わりのない刺激の中へ……

 女子と男子では、傷つき方が違います。

 女子を引きつけたのはInstagram、Pinterest、Tumblr のような画像を中心とするSNSでした。そこで彼女たちを待っていたのは自分の容姿や暮らしを、絶えず他人と比較させられる世界です。

 髪、肌、生活、体つきまで、一日中、他人から評価され、コメントされる。成長途上の少女を終日、品評会に放り込むようなものです。

 しかも、画面に流れてくる“平均”は現実の平均ではありません。

 選び抜かれ、加工され、最も美しく見える瞬間だけが並んでいる。そのため、多くの少女が“自分は平均以下だ”と感じてしまう。若い女性にとって、これほど残酷な環境はありません。

 思春期は、脳の可塑性が非常に高い“感受期”です。おおむね9歳から15歳という、自己像や対人関係の基礎がつくられる時期に、毎日何時間も短い動画や他人からの評価を浴び続ける。

 その影響を、大人が1日数時間利用する場合と同じように考えることはできません。

 片や、男子も深刻な打撃を受けています。ただ、男子についてはSNSの影響だけを見ていては本質を捉えられません。

 注目すべきは、彼らのドーパミン報酬系です。男子は依存に陥りやすく、そこを狙って利益を上げる産業がいくつも生まれました。

 中心にあるのはゲームですが、ポルノやオンライン賭博も同じです。

 いまのアメリカでは、あらゆるものが賭博化しています。子どもでさえ、オンラインで賭け事に参加できる。そして、あらゆる場所にポルノへの入り口がある。

 子ども向けのサービスであるRoblox(オンラインゲームのプラットフォーム)でさえ、成人向けサイトへの誘導が入り込むことがあります。

 男子への影響は、依存、社会からの離脱、そして人生の次の段階へ進めない“自立の失敗”として表れます。

 アメリカでは、いまや30歳前後になったZ世代の男性の中に、親元を離れず、結婚をせず、仕事にも就かず、ゲームとポルノに多くの時間を費やしている人が少なくありません。

 女子が“他人からどう見られているか”という終わりのない評価に追い詰められる一方、男子は、ゲーム、ポルノ、賭博が与える終わりのない刺激の中へ沈んでいくのです。

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