「審判の判断は絶対」で片づけていいのか…高校サッカー「誤審問題」のウラに審判を欺き、有利な判定を引き出すことに精を出してきた弊害も
全国高校サッカー選手権東京大会2次予選の「誤審問題」が話題になっている。高校サッカー選手達が“憧れの国立(こくりつ)”(MUFGスタジアム)出場を目指す、東京予選準々決勝での出来事だ。【小林信也(作家・スポーツライター)】
【写真】全国の高校生サッカー選手が憧れる「夢の舞台」国立競技場
疑惑の判定
選手権への出場枠は各都道府県1校ずつだが、東京都だけ2校の枠がある。そのため、東京大会は抽選によってAブロックとBブロックのトーナメント戦が行われ、それぞれの優勝校が代表権を得る。そのBブロック準々決勝(10月24日)で「事件」は起きた。
この出来事を、TBSテレビの《Nスタ》が10月26日に取り上げ、28日には同局の《ひるおび》でも検証した。《ひるおび》には元日本代表の福田正博氏、元国際審判員の家本政明氏らと共に私もコメンテーターとして出演し、見解を述べた。
まず概要を記そう。東海大高輪台高対駿台学園高の試合は前後半を終えて0対0。規定どおりPK戦に突入した。PK戦も5人で決着がつかず、13人目まで進んだ。先に蹴った駿台学園が失敗、決めれば勝利が決まる場面で、東海大高輪台のキッカーは右隅にグラウンダーの力強いゴールを決めた。ゴールキーパーも横っ飛びでセーブに行ったが及ばず、シュートが決まった。蹴った選手も東海大高輪台の選手たちも歓喜に沸き、GKはがっくりとうなだれる様子がゴール裏から撮った画像に映っている。主審はホイッスルを3度鳴らし、試合終了を告げた。「東海大高輪台が勝った」と、この時点ではフィールドにいた誰もが理解した。
ところが、副審だけがこの判定に異を唱えた。試合終了の笛を吹いた少し後、主審が副審に歩み寄った。そして、4人の審判団が2、3分の協議の後、「PK戦の続行」を指示したのだ。「PKは失敗だった」と判断を覆したのだ。
そして次の14人目。駿台学園が決め、東海大高輪台が失敗、駿台学園の準決勝進出が決まった。一度は勝利を宣告されたチームが敗れ、後味の悪い結果となった。さらに、この試合をゴール裏から撮影していた観客がネット上に映像を発信したことが引き金となり、「明らかに誤審ではないか」と議論が起こった。
《Nスタ》でも《ひるおび》でも放送された映像は、あくまで観客の撮影であり、勝利を判断するための公式映像ではない。W杯などの国際大会と違って、高校サッカーではVARなどの判定システムは採用されていない。だから、これらの映像を証拠として採用し、PKの成否と勝敗の判断が再検討されることはないだろう。
だが、この映像を見ると明らかにゴールの枠内を通過したと見られるボールが「ゴールネットを揺らした」と書きたいところだが、なぜか鋭い勢いのままスーッとネットを突き抜けているのだ。横から見ていた副審は、シュートが減速もせず後方に飛び出したのだから、「コーナーポストの外を通ったに違いない」と判断したのだろう。その見解を主審に伝え、主審も同意して最初の判断を翻したと推測される。
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