老朽化、資材高で注目集める「3Dプリンターで造った駅舎」…第1号の「初島駅」は竣工から1年でどうなったか 実際に現地を訪れると思った以上に
2025年にJR西日本が紀勢本線の初島駅を、“世界初”となる「3Dプリンター」で建設し、話題となってから1年。これに続くように、JR東日本も釜石線の小佐野駅を3Dプリンターで建設することを発表した。来年の3月に竣工予定で、国内では2例目になるという。
現在、3Dプリンターの性能は飛躍的に向上している。通常の建築の工事と比べて、工期が圧倒的に短縮できるメリットがあり、既に住宅の建設に採用された例もあるほか、公共施設などへの本格的な導入も進んでいくと考えられる。駅舎も老朽化しているものが全国的に多く、今後は3Dプリンターを使った建て替えが増えるはずだ。
そんな3Dプリンター製の駅舎の雰囲気は、いかなるものなのか。駅舎の使い勝手や、気になる劣化具合など、初島駅を訪問し、現状を視察してみた。【取材・文=山内貴範】
なかなか愛らしいデザイン
新大阪駅から特急「くろしお」に乗り、大阪、天王寺、和歌山などを経由し、海南駅で下車。ここで普通列車に乗り換えて15分ほどで初島駅に到着する。初島駅は特急停車駅でもないごくごく普通のローカルな駅に過ぎなかったが、2025年の改築に伴い、いきなり“世界初”の称号を手にすることになったわけである。
長大なホームと立派な跨線橋に対して駅舎は小ぶりだが、白い屋根と壁面が目立つため、一目でそれとわかる。規模としてはバス停くらいの大きさだが、これまでの無人駅とは異なり、無機質な雰囲気が感じられない。スタジオジブリの作品か鳥山明氏の漫画に出てくる住居のような印象で、なかなか秀逸なデザインだ。
壁面には、地域の名物である魚(太刀魚)とミカンのレリーフが刻まれているのがわかる。3Dプリンター製の建築は、少しずつコンクリートの層を重ねて作るため、壁面にミルフィーユ状の横縞の模様が現れる。初島駅舎も模様は健在ながら、汚れを落としやすくするためにパーツの角度を90度変えて設置し、縦状なのが特徴である。
緩やかなカーブを描く屋根も美しく、ホームや駅前広場から見ても存在感がある。コンクリート製ということもあってどっしりとした風格があり、頑丈そうだ。それでいて、工業製品であるはずなのに、手仕事のようなあたたかさが感じられるのも不思議だ。
それは、パーツが曲面で構成されて角が少ないことや、表面の縞模様にムラがあって均質でないことなど、これまでの工業製品にはあまり見られなかった特徴が見られるためかもしれない。それでいて、ICカードの簡易改札機や切符の券売機、ベンチなど、必要最低限の機能がコンパクトに収まっているので、使い勝手は悪くない。デザインと機能が両立しているのだ。
無機質なアルミの駅舎よりも魅力的
改築前の駅舎は戦後も間もない頃に建設されたもので、紀勢本線に多く残る典型的な国鉄時代の木造駅舎だった。以前は窓口も設置されている駅だったが、利用者の減少とともに無人化。駅舎の老朽化も進んでいたこともあり、維持費用の問題もあって、3Dプリンターでの建て替えに至ったというわけだ。
3Dプリンターが採用されたのは、コストカット、そして工期短縮の面で優れていたためである。初島駅のケースは、あらかじめ他の場所で製造した部材を運び込んでおき、終電が出た後に工事を開始。現地で組み立てを行い、早朝には完成を見た。要した時間はわずか6時間というから、魔法を使ったかのようなスピードで完成している。
完成から時間が経ち、駅舎は地域にすっかり馴染んでいる印象を受けた。壁面が白いため、1年も経てば汚れが目立ってくると思っていたし、駅から海までの距離が約600メートルとのことで塩害も心配だった。ところが、驚くほど傷みが少なく、美しい状態で保たれているのには驚いた。
都市部では駅がどんどん高層化され、ショッピングモールのようになるケースが多い。一方、地方のローカル駅舎が改築される場合、前の駅よりも規模が縮小されるのがほとんどだ。JR四国では、建て替え後にバス停のようなアルミ製の簡素な駅舎になってしまうケースが相次いでいる。このことから、駅舎の改築をネガティブに捉える人も少なくない。
しかし、初島駅を見た印象では、3Dプリンター製の駅なら改築もアリだと感じられた。デザインの自由度も高いというから、どこにもないオンリーワンの駅舎ができる。白以外の色でも造れるのであれば、地域のランドマークになり得る面白い建築が造れそうである。
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