誰が子どものトラブルの責任を負えるのか……各国で進む「SNS規制」でも日本が“一律年齢制限”には慎重な理由

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 世界各国で子どものSNS利用を制限する動きが高まっている。オーストラリアでは昨年12月に16歳未満のSNS利用を事実上禁じ、EUでも13歳未満の一律禁止が検討されている。年齢による一律制限という解決策が示される一方、これは言うまでもなく子どもの知る権利や表現の自由を侵害しかねない諸刃の剣だ。こども家庭庁のWGで座長を務める曽我部真裕教授が、世界各国の規制の成否を検証しながら、来年の法改正を見据えた日本のSNS規制の針路を論じる。

〈2026年10月26日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました〉

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 2025年12月、オーストラリアで16歳未満のSNS利用を事実上禁止する改正オンライン安全法が施行され、対象事業者に最大約4950万豪ドルの制裁金を科す強力な規制が始動し、追随する国が相次いだ。

 こうした動きに影響を与え、あるいは後押しするものとして、本サイト(新潮QUE)でもインタビューが掲載された社会心理学者のジョナサン・ハイトの著作『不安の世代』(西川由紀子訳、草思社、2026年)がある。直近では、今年9月に、EUのフォンデアライエン委員長は、13歳未満のSNS利用を禁止するほか、15歳未満は個人用アカウントを持てないようにする規制を検討すると表明した。

 各国で政策が展開する背景として、SNSを含むデジタルサービスの過度な利用や不適切利用と、子どものメンタルヘルス等との関連を示す研究は蓄積している。2010年代以降、世界的な若年層のメンタルヘルス悪化の要因としてスマホやSNSが挙げられている。米国保健福祉省(HHS)は2023年、1日3時間以上のSNS利用でうつ病や不安障害のリスクが約2倍になると警告した。

 日本国内でも、2024年に国立精神・神経医療研究センターなどから公表された研究成果では、思春期のネット不適切使用が抑うつ傾向のみならず幻覚や妄想といった「精神病症状」のリスクを上昇させることが判明した。同センターなどによる2025年の別の研究成果でも、オンラインゲームの不適切利用がメンタルヘルス不調に直接的な因果関係を持つことが裏付けられたという。

 こども家庭庁のワーキンググループにおいても、長時間利用、低年齢化、依存や学力・脳の発達への影響は、「横断的リスク」として深刻視されている。

「年齢制限」だけでリスク対策が完結するのか

 重要なのは、こうしたリスクが単に「SNSを利用すること」それ自体から生じるのではなく、長時間利用を促す設計、レコメンド、通知、無限スクロール、見知らぬ者との接触機能など、サービスの設計や利用態様とも密接に関係することである。そうであれば、対策も利用者側の年齢制限だけで完結するものではない。

 しかしそもそも、現行法である青少年インターネット環境整備法は、2008年制定ということもあって「ガラケー」時代を前提としており、携帯電話会社にフィルタリングを提供させ、保護者が管理するという二者に責任を集中させる構造をとっており、サービスの設計にもっともかかわるSNS事業者に関する規制はほとんどなされていない。

 そこで、必要なのは関係主体間の「役割リバランス(責任の再配分)」である。SNS事業者のみならず、OS、ゲーム、生成AIなどの事業者に対し、技術的・管理的能力に応じた責任を明確化せねばならない。設計段階から安全性を組み込む「セーフティ・バイ・デザイン」の推進や、プライバシーに配慮した実効性のある「適切な年齢確認措置」が不可欠である。

 他方、国家が法律で「有害」を一律に定義し削除や閲覧禁止を強制する直接規制は、表現の自由への重大な介入となるため避けるべきである。事業者の自主的な取り組みを法律で後押しし、第三者評価や官民連携を組み合わせた「共同規制」こそが実効的アプローチとなる。

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「新潮QUE」にて公開中の関連記事【誰が子どものトラブルの責任を負えるのか――日本がSNSの一律年齢制限に慎重な理由】では、「一律年齢制限」ではない対策を行う海外諸国の事例や、日本が何を軸として規制を行うべきかさらに詳しく論じている。

デイリー新潮編集部