「誤報を配信し、謝罪」 なぜ新聞記事のクオリティーは劣化している? 「今の記者クラブは“仲良しクラブ”」
「各社のなれ合い体質」
それにしてもこの体たらく、どうしたことだろうか。
「劣化の原因はいろいろあるでしょうが、各社が“お手々つないで”というなれ合い体質になり、特ダネを競い合う気持ちがなくなっているように思います」
そう嘆くのは、読売新聞社会部OBでジャーナリストの大谷昭宏氏である。
「私の現役時代の新聞協会賞で真っ先に思い起こす記事といえば、サンケイ新聞(当時)の『連続企業爆破事件の犯人グループ、きょういっせい逮捕』。当時私は大阪社会部に在籍していましたが、度肝を抜かれるような大スクープで、深夜、上司にたたき起こされた苦い思い出があります」(同)
1974~75年にかけて、三菱重工ビル、三井物産本社など、旧財閥系企業や大手ゼネコンを標的とした連続爆破事件が発生。当局も新聞各社も「東アジア反日武装戦線」を名乗る犯行グループの正体に迫るべく、躍起になっていた。
「警察当局は被疑者を逮捕するまで書くなと通達していたのですが、サンケイは無視して掲載に踏み切った。刑事が早朝から被疑者宅に張り込んで、被疑者に新聞が配達されるのを防ぐ緊急措置が取られました」(同)
この一件を受けて、
「読売の東京本社に在籍する公安担当の記者が全員降格処分を受けました。各紙ともこうした特ダネ合戦を日夜繰り広げていた。いくら当局から“書くな”と言われても、“書くものは書く”という気構えが漲(みなぎ)っていました」(同)
「今の記者クラブは“仲良しクラブ”」
それが今ではどうか。
「ある事件について、当局は逮捕から送検にいたるまでの全てを発表する。その際、証拠品などを整然と並べた上、事件名のご丁寧な看板までつけてみせる。そして、当局がよしと言うまで絶対に記事にしないことを各社に通達し、メディアも容認する。メディアは捜査当局のリードに乗っかっているに過ぎません。これでは取材力が落ちるに決まっています」(大谷氏)
とした上で、こう往時を回顧するのだ。
「今の記者クラブは“仲良しクラブ”。かつてはテーブルの下で“足の蹴り合い”をしていたものでしたが」
記者クラブの“機能不全”については、元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏も、
「私は朝日新聞時代から記者クラブ廃止論者でした」
と、手厳しい。
「もともと記者クラブは、各紙の記者が一緒に権力と対峙し、団体交渉するためにつくられました。当局が取材や会見を拒否したときに、一致結束して“会見しろ”“情報を出せ”と交渉するわけです。ところが、実態としては当局側の情報コントロールの装置に成り下がってしまっています」(同)
さらにこの傾向を強める現代特有の事情がある。
「今はかつてよりもメディアが増えていますが、ネット媒体からの攻撃を避けるため、当局はオールドメディアで固まる記者クラブを利用しようとしています。記者クラブがダメだと言えば、フリー記者は会見にも参加できませんから。記者クラブは情報開示を求めているのか、情報隠蔽(いんぺい)に加担しているのか、甚だ疑問です」(同)
取材力が低下していくとともに、紙面に氾濫するようになったのが「ポエム記事」だ。
後編では、「ポエム記事」増加の背景や、かつては人気就職先だった新聞社に優秀な人材が集まらなくなった理由について報じる。
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