カナダ国旗に描かれたのは紅葉? それとも楓? 古より歌に刻まれてきた“日本人との深い関わり”とは
楓がテーマの短歌は…
下って、明治以降の作では、若山牧水の以下の作品が知られている。
〈ひたすらに君に恋しぬ白菊も 紅葉も秋はもののさびしく〉
(現代語訳 ひたすらにあなたを恋しく思っている。白菊も紅葉も、秋にはなんとなく寂しく感じられて)
早稲田大学の在学中の大恋愛を詠んだものだという。
一方、楓をテーマにする短歌は古来そう多くはない。『万葉集』巻八に収められているのは、大伴田村大嬢(おおとものたむらのおおとめ)のこんな歌だ。
〈我が宿にもみつ蝦手見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日はなし〉
(現代語訳 わが家の庭で色づく楓を見るたびに、妹であるあなたを思い出し、会いたいと思わない日はありません)
「蝦手(かへるて)」は楓の古名だ。
白秋、晶子も
また近代では、青々とした楓の葉をテーマにした北原白秋の一首がある。『白南風』では、
〈根府川石やいまは日ざしも夏まけて板屋かへでの若葉映ろふ〉
(現代語訳 庭の根府川石よ いまは日差しも夏めいてきてイタヤカエデの若葉が美しく照り映えている)
と、若葉の美しさを詠んでいる。
さらに与謝野晶子も、『白桜集』にてこう詠んでいる。
〈青空のもとに楓のひろがりて君亡き夏の初まれるかな〉
(現代語訳 青空の下に楓の若葉が広がって、あなたのいない夏が始まったのですね)
この人らしい作品だ。
独立派が勝利
ところで、カナダ・ケベック州で、この10月5日に州議会選挙が行われ、カナダからの独立を主張する野党ケベック党が勝利し、第一党となった。これまでケベック州の政権を担っていたケベック未来連合は全ての議席を失う歴史的な大敗を喫したのだ。直ちに独立に結び付くとはいえまいが、マーク・ジョセフ・カーニー首相(自由党)にとっては、トランプ米大統領に対抗するために国内の結束を維持することが難しくなる可能性が予見される。
隣国アメリカとの緊張関係を含め、今のカナダには、国旗の真っ赤な楓のように全山、赤く燃え上がるような気配がある。モントリオールやケベックなどから成るケベック州はフランス語圏で、昔から独立機運が強い地域だ。無責任な予想だが、トランプ米大統領がカナダを軽視して、侮辱を続けるなら、ケベックの独立、独立後のフランスとの関係強化だって、ありえない話と笑い飛ばすことはできない。
松の緑があってこそ
そうだ、高野辰之の唱歌『紅葉』は「♪秋の夕日に照る山紅葉」で始まり、「♪濃いも薄いも数ある中に松をいろどる楓や蔦」と流れていく。つまり紅葉と楓の両方が歌詞に出て来る。燃えるような赤ばかりではなく、松の緑があってこそ十和田の秋は美しかったのだ。
知り合いに紅葉子(もみじこ)・楓子の双子がいる。カナダ国旗が今のものになった1965年2月15日の生まれだ。お会いして今でも区別がつかないくらいだ。お二人にカナダ国旗を『紅葉』と呼ぶか、『楓』と呼ぶか、聞いてみようかな。
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