「綾瀬はるか」主演映画がまさかの大苦戦 「川口春奈」の主演作はヒット中…トップ女優が直面する“作品選び”の難しさ

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理由は作品選び?

 社会派作品である。監督は映画「九十歳。何がめでたい」(2024年)などをヒットさせた前田哲氏が務めた。力のある人だ。

 綾瀬の所属事務所・ホリプロとしては、やはり所属する鈴木亮平(43)の主演作「花まんま」(25年)を秀作に仕上げた監督だけに、安心して任せたのではないか。実際、作品に問題があるわけではない。

 もっとも、社会派作品を当てるのは難しい。2020年以降に興収が10億円を突破した作品は数少ない。二宮和也(43)がシベリア抑留経験者に扮した22年の「ラーゲリより愛を込めて」(26.7億円)などである。

 さらに、セクハラもパワハラも自分の問題にならないと、どうしても関心を抱きにくい。歴史的事故や事件、戦争とは異なる。

 社会派作品が当たりにくいのはドラマも同じ。政治と選挙をテーマにしたフジテレビ系の春ドラマ「銀河の一票」も、平均個人視聴率は2.4%にとどまった。合格点とされているのは3.0%だ。ちなみにエンタメ色を極めたTBS「VIVANT」の25日放送分は12.1%だ。

 映画もドラマも社会派作品が当たりにくい理由は、第一に観る前から「重い作品」と感じられ、敬遠されやすいからである。映画やドラマは娯楽や気晴らしと考えている人が多い。それは誰にも責められない。

 さらに「原作がないから、話題になりにくい」。社会派作品は原作ドラマや漫画、小説がない。だから、扱うテーマに関心のない人は観ない傾向が強い。綾瀬の映画にはモチーフとした実話があるものの、その認知度は低い。

 大悟(46)とダブル主演し、5月末に公開された映画「箱の中の羊」が、伸び悩んだことも影響しているのではないか。第1週の興収は約1億9235万円。第4週終了時点では6億7498万円だった。前作が頭打ちだと、観客側は「次も期待できないのではないか」と考えることもある。逆に当たると、次回作への期待値も高まる。

 前作の監督は是枝裕和氏(64)。綾瀬の代表作である「海街diary」(2015年)のメガホンを執った人だ。

 前作の舞台は近未来。建築家の女性(綾瀬)は2年前に幼い息子を亡くした。工務店を営む夫(大悟)は、亡き息子と同じ姿をしたヒューマノイド(人型ロボット)を家族として迎え入れる。やがて夫婦の間に波紋が広がる。

 やはり社会派色のある作品だった。娯楽色は薄く、観る側に家族や人間のあり方を問いかけた。結果的に綾瀬の作品は硬質のものが続いた。これもプラスにはなっていないのではないか。「また硬いのか」と思われてしまった可能性がある。

 4月中旬にも綾瀬の主演映画が公開された。「人はなぜラブレターを書くのか」(監督・石井裕也)である。興収は10億円を突破し、話題作となった。切なく、ハートフルな物語だった。

 既婚で子供もいる女性(綾瀬)は高校時代、男子高校生に秘かな恋心を抱いていた。だが、その男子は地下鉄事故で不慮の死を遂げてしまう。2000年に実際に起きた東京・麻布高校生死亡事故をモチーフにしている。

 事故から24年後、女性は意を決して、男子の父親に手紙を書く。そこには家族も知らなかった息子の青春の日々がつづられていた。淡い恋と家族愛、命の重さが描かれた。旧来の綾瀬のイメージ通りの作品だった。

 さまざまな役柄に挑むのも演技者の道だが、観客と視聴者が望む役柄に拘るのも演技者の道である。綾瀬はどちらの道を選ぶのか。選択を迫られている時期かも知れない。

綾瀬の進む道

 名優・高倉健さんは83歳で他界するまで、無骨で現役世代の男しか演じなかった。パブリックイメージを守った。渥美清さんは知性派役を極力避けた。

 原節子さんは引退まで清純派で通した。大原麗子さんの演じる役柄は、ちょっと気の強い、凜とした女性ばかりだった。

 綾瀬は透明感や清潔感、親しみやすさが売り物。それでトップに立った。今からイメージを壊すのか、守り続けるのか。

 綾瀬はドラマの当たり役からも遠ざかっている。2022年のフジテレビ「元彼の遺言状」は平均個人視聴率が5.9%に達したが、第3回以降は数字が落ちた。制作上の問題もあるが、続編を望む声も聞かなかった。

 この作品での綾瀬も弁護士。金銭欲が旺盛で、意地が悪かった。旧来の綾瀬のイメージとは異なった。

 2025年のNHK「ひとりでしにたい」は平均個人視聴率が2.9%。39歳の美術館学芸員が終活を始める物語だった。途中で恋らしきものも経験した。

 この女性はお金と時間は自分のためだけに使うものだと考える個人主義者。やはり旧来の綾瀬のイメージとは違った。

 綾瀬を知る制作者から「実際の彼女は皆さんが抱くイメージとは違いますけどね」と聞いた。サバサバしているらしい。

 今後、綾瀬はどんな顔を見せるのか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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