「織田翔希」“MLB挑戦宣言”で思い出す「田沢ルール」 「このままでは高校野球は草刈り場になる」

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“田沢ルール”はなぜ撤廃されたのか

 このルールがみたび注目されるようになったのは20年、当の田沢が米国球団を退団して帰国した際だった。

 そもそも、田沢ルールには“職業選択の自由を不当に制限している”という批判が根強かった。日本プロ野球選手会も問題視し、撤廃を申し入れた。公正取引委員会も独占禁止法違反の疑いで調査を開始。こうした批判を受け、NPBは同年9月、ルールを撤廃し同様の規定を新設しないことを決めた。ちなみに、田沢はルール撤廃によって同年のドラフト指名対象となったが、指名する球団はなかった。

 現在、選手が海外球団を目指すことを理由に、NPBが一律に復帰を制限する仕組みはない。

「ルールがなくなった以上、日本のアマチュア選手がアメリカを選ぶことを止めるのは難しい。しかも、メジャー球団には資金力があり、契約条件や育成環境も含めて、日本の球団にはない魅力的な選択肢を提示できます」

日米の獲得競争に潜む「不均衡」

 そして、もしこの潮流が勢いを増せば、高校球児の進路に「大学進学」「社会人」「国内プロ入り」だけでなく、「メジャー挑戦」が現実的な選択肢として加わることになる。若者たちの将来の選択肢が増えるのは、一見すると歓迎すべきことのように思えるが、ことはそんなに単純ではない。

「アマチュア側にはプロとの接触を制限する厳しい規約があり、NPB各球団もそれを遵守するよう覚書を交わしています。しかし、MLBとの間にはそのような取り決めは存在せず、スカウトたちは自由にアマ側と接触している。国内球団がルールを守っている間に、海外球団が先に選手や家族と関係を築くこともできるのです」

 スポーツ紙デスクが危惧するのは、こうした日米間の獲得競争における不均衡である。

「このままでは、日本の高校野球がMLBの草刈り場になりかねません。織田君のような逸材が次々と海を渡れば、NPBは有望な高校生を獲得できず、長年かけて築いてきた日本独自の育成の仕組みも崩壊してしまいます」

自由競争が招いた「裏金問題」

 ならば、NPBは自身に課していた制約を撤廃すればよいのだろうか。自由競争が行き過ぎたとき、何が起こるのか。日本球界には、その苦い経験がある。

 1993年に導入された「逆指名制度」だ。ドラフト1、2位の大学生・社会人の選手は希望球団を表明できるようになった。2001年には「自由獲得枠」へと改められ、高校生を除いて各球団が最大2人を自由競争で獲得できる仕組みに。さらに05年には「希望入団枠」となり、大学生・社会人を対象に各球団1人まで獲得できるようになった。

 しかし、球団が有力選手を獲得しようと競争を繰り広げるなかで、問題になったのが“裏金”だった。04年には明大の一場靖弘選手を巡る金銭供与問題が発覚。07年には西武がアマチュア選手に金銭を渡していた問題が明らかになるなどし、希望入団枠は廃止された。

「本来は選手の希望を尊重するための制度でも、自由競争に傾きすぎれば、球団の資金力や水面下の交渉がモノを言う。公平性を保つために導入したドラフトが、逆に不透明な獲得競争を招いてしまったわけです」

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