「生成AI講座」で“シューティング”“陣取り合戦”ゲームを制作…「青山学院中等部」がChatGPT普及前からAI教育に踏み切った理由
子どもたちの世界にもSNSが入り込み、いじめや炎上、個人情報の流出など、さまざまな問題の火種になってきた。これに加えて生成AIの出現がある。生成AIとどう付き合うべきか、頭を悩ませているのはどこの教育機関も同じだろう。青山学院中等部もそのうちの一校だと言える。だが同校が一味違うのは、中学3年生の生徒向けに「生成AI講座」を開講し、実践的にAIの利便性・危険性と向き合っている点だ。(構成:宮本さおり/ジャーナリスト)
〈2026年10月24日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました〉
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青山学院中等部では「生成AI」をテーマにした特別講座が開かれている。参加しているのは、中学3年生の希望者たちだ。学校全体としては生成AIの利用に慎重な同校だが、この授業だけは少し事情が違う。大学までの一貫教育を強みに持つ青山学院では、生徒が興味や関心に応じて選べる選択授業があり、「生成AI」講座もその一つとして設けられている。
講座は、大学校舎の一角にある特別教室を使っている。というのも、中高の校舎ではネット利用に制限がかかっており、生成AIを使った作業ができない。そのため、この時間だけは制限のない特別教室に場所を移して授業を行っている。この日のテーマは、パソコンで遊べるオリジナルゲームづくり。完成したゲームは最終的にゲームのプラットフォームへ投稿し、公開するという。
とはいえ、難しいプログラミングコードを一から書くわけではない。「こんなゲームを作りたい」とイメージを入力すると、生成AIがまず基本形を作ってくれる。そこに「キャラクターはこんな感じにしたい」「動きはこうしたい」といった細かな指示を重ねながら、作品を仕上げていくのだ。昔懐かしいインベーダーゲームを思わせるシューティングゲームを作る生徒もいれば、戦国武将の陣取り合戦をゲーム化する生徒もおり、発想は実にさまざまだ。教員によれば、使用する生成AIについては、教員側が事前に設定を行い、安全性に配慮して授業で活用しているという。
授業の前半は、使用上の注意点や制作の基本についてのレクチャーに充てられていたが、それが終わると、生徒たちはそれぞれのパソコンに向かい、自分のゲーム作りを進めていった。途中、教員からはこんな声がかかっていた。
「分からないことがあったら前回までの内容を動画にアップしてあるので、それも参考にしてみてください」
授業で必要になる説明や手順はあらかじめ解説動画として教員が用意している。作業の途中で分からないことが出てきたり、壁にぶつかったりしたときは、まず各自でその動画を見直し、自己解決を試みるようになっていた。もちろん、それでも分からない生徒はいる。「先生、ここが分かりません」。そう声をかけてくる生徒に対しては丁寧に教えていた。
講座担当者はAI時代の子どもの資質をどう見るか
この講座を6年前から担当しているのは安藤昇氏。「講座が始まった当初は、Pythonなどのプログラミングを教えていました。現在は生成AIを活用し、生徒が自分のアイディアを形にする授業に取り組んでいます。」と話す同氏は「スタディサプリ」で「情報」科目の学習コンテンツも担当する人物としても有名だ。本業はシステム開発会社で働く現役のプログラマーで、教員が本業ではない。会社では部長職を務め、2人の部下とともに、Claude CodeやCodexのMAXプラン7つを活用して開発業務に取り組んでいる。
「私の開発現場では、AIエージェントを活用することで、これまで多くの人手と時間を要していた作業を短時間で進められるようになっています。ただし、何を任せるかを決め、結果を確かめるのは人間です。私自身が日々AIと一緒に働いているからこそ、その可能性や使う際の注意点を、生徒たちに具体的に伝えられるのだと思っています」
いまの中学生たちが社会に出るころ、職場の風景は大きく変わっているかもしれない。人の隣でAIが働き、資料をまとめ、企画の下書きをし、時には判断材料まで示してくれる、そんな光景が当たり前になっていても不思議ではない。だとすれば、AIをどう動かし、何に使うのかを考える力は、将来のビジネススキルとして欠かせない素養になっていくだろう。
では、AI全盛の時代を生き抜くために、子どもたちが今身に付けるべき力はなんなのか。同氏は「飽きずに続けられることではないか」と話す。
「AIが多くの作業を担うようになるほど、人間には『何をしたいか』『何をつくりたいか』というアイディアや目的意識が求められると思います。だからこそ、夢中で何かに取り組める人は強い。極端な例を挙げれば、休日に何をしたいかさえ思い浮かばないようでは、AIに何をしてもらいたいかを考えるのも難しいでしょう。自分の中に『これをやってみたい』があることが、AI時代には大きな強みになると思います。生徒たちには、自分が面白いと思うことを見つけ、試行錯誤しながら形にする経験を積んでほしいと思っています」
夢中になる力を育てるために、思考力や感性が豊かになる中高生時代にこそ、何かに熱中し、飽きずに一つのことをやり続ける力を養うことが重要だという。
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