台頭する「事務局長族」とは何者か…自民党で勢力を競い合う「族議員」知られざる生態

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 コメの品薄と価格高騰が深刻だった「令和の米騒動」。小泉進次郎農林水産大臣(当時)が事前に諮ることなく「政府の備蓄米を市場に放出する」とメディアに発表したため、古参の農林族を中心に「何事も事前に部会に諮れ!」「ルールを覚えるべきだ」と大臣への猛抗議が起きた。「族議員」とは、省庁別の政策分野について、強い影響力を行使する議員たちのことを指す。業界団体から回ってきた資料をもとに発言する「にわか族議員」に、政策調整を担う「事務局長族」、さらには、スタートアップ経営者と関係を深める議員も現れている。

(2026年10月14日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました)

党内議員のほとんどが族議員化することも

 中選挙区制では自民党同士が同じ選挙区内で争うため、政策・票・資金ともに各議員は特化した専門性を有していた。小選挙区選出の議員は、基本的に自民党の全ての各種友好団体と付き合う必要がある。医師会、建設業協会、農業団体、経済団体、教育団体……特定の専門分野より広く薄く様々な業種との付き合いが要求される。業界側も衆院の300近い小選挙区選出の自民党議員宛に陳情を行うため、政策課題によっては、党内議員のほとんどが族議員化することもある。

 今や自民党所属の国会議員は衆参合わせて400人を超える。「骨太方針」原案を議論した7月の政調全体会議では、多くの議員が詰めかけたため資料閲覧用のタブレット端末が不足。発言希望者が相次いだ結果、会議時間も延長した。誰でも参加、発言できる平場の会議では、時折「にわか族議員」として、業界や関係省庁から回ってきた“アンチョコ”ペーパーをもとに発言する者もいるからだ。

TPP協定交渉時、JAから反対要請を受けた議員らが詰めかけた

 別の事例を挙げると、かつてのTPP(環太平洋パートナーシップ)協定交渉時は地元のJA(農協)から反対要請を受けた議員らが関係会議に大挙して詰めかけた。農林部会長以下若手議員が「TPP反対」「重要5品目の聖域確保」と次々訴える会議は発言希望者が続出することで毎回数時間にわたり、農業団体の力を見せつけた。一方、その農業団体に配慮しながらも、会議の外で政府(当時は安倍政権)との落としどころを探っていたのが、農林族のベテラン議員たちであった。

 近年でも議員の間で役職希望率、参加率ともにトップ3とされる部会は、「国土交通部会」「経済産業部会」「農林部会」であり、関係する業界・団体や地元からの要望が多い分野に議員の関心が高いことがわかる。そこに票とカネが集まるからだ。一方、不人気と言われた「外交部会」「国防部会」や「文部科学部会」への参加率も近年は高まる傾向にあり、外交・安全保障や子育て支援などへの有権者の注目度が高いことや、高市政権の外交・安保政策等へのシフトが影響しているものと思われる。

 さらに昨今は、政調会の中でも調査会や省庁横断型の本部形式の会議を仕切る事務局長を複数こなす若手・中堅クラス議員「事務局長族」「シン事務局長族」の台頭もある。事務局長には会議の日程や進行、省庁との調整などかなりの裁量が与えられており、政策立案の実務能力の高い、将来の幹部候補であることの証しとなっている。事務局長を経て台頭した代表例が、木原誠二元官房副長官、小林鷹之政調会長、村井英樹国会対策委員長などだ。

 また、永田町で近頃見かけるのがスタートアップなどの若手経営者たちだ。髪型やスーツの雰囲気などで従来の業界団体の陳情団とは一線を画す。彼らに多い要望の一つが政調会の会議への出席だという。政策への反映との触れ込みで、部会等に参考人として出席し、自身の事業や経歴をアピールした実績は何らかの箔付けになるようだ。部会長など役員にそういったロビー活動をする企業経営者らを見かけるし、これまでの自民党的業界・団体とは異なる彼らとの交流を深める議員も増えており、議員主催の政治資金パーティーなどでもそういった若手経営者の姿を見かける。これも新たな形の「族議員」と呼べるだろう。

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桐山煌(きりやま・こう)
1974年生まれ。作家・政治アナリスト。永田町、霞ヶ関を中心に豊富な勤務経験を持つ。

デイリー新潮編集部