京アニOBが、事件で亡くなったアニメーターの功績を“実名を挙げて”語り続ける理由 「池田晶子さんは年下ですが、ロボットの絵を褒められたことがあります(笑)」

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いいものを作りたいという熱量があった

――上宇都さんの目から見て、なぜ京アニは世界的なアニメスタジオになり得たと思いますか。

上宇都:他社よりもいいものを作りたいという熱量があったためです。そして、東京は地の利があるのでギリギリまで粘れる環境だったのですが、逆に地方ではそれができません。

 だからといって、地方だから遅れても仕方ないは甘えですし、とにかくスケジュールを守る、守らないと信用が勝ち取れないという教えがあった。そのうえで丁寧な仕事を積み重ねて信頼を得てきた結果、今があるのだと思います。

――事件で京アニは、木上さんや池田さんなど、優秀なアニメーターを多数失いました。その後、再建に努めていますが、現在の京アニを見てどう思いますか。

上宇都:事件があってからだいぶ葛藤があったと思いますが、最新作「二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-」でだいぶ吹っ切れたな、と思いました。スタッフロールを見ると私が知らないスタッフが増えているので、人材の採用と育成、技能の継承が上手くいっているなと思います。

 京アニは今でも素晴らしいアニメを作っていますし、私が在籍していた頃よりも進化していると感じています。

アニメ業界に恩返しをしたい

――今後、上宇都さんがアニメ業界のために行っていきたいことについて、教えてください。

上宇都:専門学校の講師は京アニに在籍していたときからやっていて、かれこれ24年目になります。歴代の卒業生の同窓会を開いたら、最初に教えた人が現役で活躍して、作画監督を務めているのを見て感動しましたね。

 最近は、ご存じのように、アニメのテロップを見ると日本人よりも外国人の名前が目につく状態です。これは成果主義なので当然ですが、国内に絵を描ける人が少なくなっている状況を改善できるならしてみたい。若手の優秀な人材を送り出すことが、私なりのアニメ業界に対する恩返しです。

――若手が一人前のアニメーターになるためには、何が必要だと思いますか。

上宇都:今の作画環境はデジタルで、液晶タブレットで描く時代です。しかし、ツールがデジタルになっても変わらないのがアナログの作画技術で、これをしっかり教えています。ツールはあくまでも、きれいな線を描くためのツールでしかありません。アナログで、フリーハンドできれいな線を描ける技術があれば、デジタルでももっときれいに作画できます。

――アナログの技術は、アニメーターの作画の基本中の基本というわけですね。

上宇都:学校は、最新の機材を入れていることをウリにしていますが、それを操るのは人の手ですからね。デジタル、そしてAIの時代だからこそ、アナログを使いこなす技術がこれからのアニメーターには欠かせないと考えています。

 第1回【パートの主婦がセル画を塗っていた時代も…事件から7年「京都アニメーション」の黎明期をOBが明かす 「当初は大手の下請けで、社屋も老朽化が激しかったですね」】では、京アニOBの上宇都辰夫氏に、京アニへの入社までの経緯や、社内で学んだこと、京アニという会社の社風などについて伺っています。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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