なぜ日本唯一の寝台特急の“シャワーカード”が転売されるのか…「サンライズ瀬戸・出雲」に乗ってみて分かった“トラブル続発”の理由
シャワーカード争奪戦は一瞬で終わる
筆者が乗る「サンライズ瀬戸」の4号車付近には、入線前から長蛇の列ができていた。4号車に乗る人が極端に多いのかと思いきや、そうではなく、3号車でシャワーカードを購入する人の列なのである。そう、「サンライズ出雲・瀬戸」の最大の特徴は、車内でシャワーを利用できる「シャワー室」が備わっていることにあるのだ。
シャワー室の利用には1枚330円のシャワーカードが必要で、販売機で買い求めなければならない(なお、「サンライズ出雲」は10号車にある)。列車のドアが開いたのは10分ごろだが、人々は黙々と車内に入り込んでいく。連日、このようにシャワーカードを巡る争奪戦が展開されているというわけだ。
乗客は1台しかない販売機に小銭を投入し、シャワーカードを購入していく。転売屋と思わしき人はおらず、誰もがマナーよく買っていた。なかには“ぬい活”なのだろうか、ぬいぐるみと一緒に購入風景を撮影している人も見られた。販売機の傍には転売を禁止する旨の注意書きがあるものの、ネットで言われるような殺伐とした雰囲気はなかった。
とはいえ、26分の出発前に、シャワーカードはあっさりと売り切れてしまった。車内という制約上、お湯にも限りがあるため、もともと発売枚数が少ない。一説によると1編成あたり20枚程度の販売数といわれる。したがって、どうしてもシャワーを浴びたい人は、いの一番に買いに行かなければならないようだ。
26分、列車が発車すると車掌のアナウンスが入る。「シャワー室の利用にはシャワーカードが必要で、販売機でお買い求めいただけます」という旨のアナウンスが流れたが、この時点ですでに売り切れているのだ。なお、個室の中でもハイグレードな「シングルデラックス」の乗客は、専用のシャワールームが利用できる旨のアナウンスがあった。
シャワーを浴びる体験そのものが非日常
それにしても、なぜこれほどまでにシャワーの人気があるのか。近くのマンガ喫茶にもあるではないか……と思うのだが、やはり寝台列車の中でシャワーを使う体験が非日常だからであろう。しかも、シャワーカードは使用後もお持ち帰り可能だから、思い出に残る。これは鉄道ファンならずとも嬉しい。
利用料金は330円で6分間利用できる(途中に水を止めるとその分停止できる)のだから、良心的な価格設定である。そうした面もあって、「サンライズ瀬戸・出雲」ではシャワーカード自体がレア化しているのだ。
せっかくなので、車内を探検してみた。「サンライズ瀬戸・出雲」のそれぞれにラウンジがあり、発車直後からさっそく陣取って酒盛りを始めている人たちがいた。埼玉県在住という学生に話を聞くと、休日を使って四国の名所を巡る予定という。高松駅に着いたらまずは高松城を観光したのち、琴平電鉄に乗るそうだ。
筆者が利用するノビノビ座席は特急券のみで利用でき、寝台券が不要な最安の座席である。個室のように壁はなく、カーペット敷きのスペースにごろ寝するのだが、乗客の様子をチラ見すると、ビールを飲む人、読書をする人、スマホゲームをする人など様々であった。大声で会話する人は見当たらない。
22時35分頃、この日最後のアナウンスがあった。おやすみになっているお客様がいるので、ラウンジ内での会話は控えるように注意喚起。そして、次に放送を入れるのは岡山駅到着前であるとアナウンス。23時を過ぎると既に眠りについている乗客も多く、カタン、カタンという列車の走行音が響く程度で、車内は静かで快適だった。
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