実況を終えた時には「日付が変わっていました」…監督・選手はもちろんアナウンサーにとっても「日本シリーズ」は特別な舞台 「実況アナなら“胴上げを実況したい”というのが人情です」

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アナウンサー選定の苦労

 こうした準備を経て、いよいよ日本シリーズ開催となると、今度は実況アナウンサーを決めるという社内的な作業が待っています。

 1~3戦目は、優勝日本一、胴上げの可能性がありませんから、あまり気を遣わずシフトが組めるのですが、4戦目以降は胴上げの可能性が日に日に高くなります。

 野球実況アナウンサーなら「胴上げ実況をしたい」というのは人情です。

 4戦目以降の担当になったとしても、そのアナウンサーの担当日に何勝何敗になっているのかは誰にもわかりませんが、部下のモチベーションを下げないように慎重にシフトを考えました。

 社によっては、シフトを決める立場のアナウンサーが星取りを想定して、自分を胴上げ実況できそうな日にはめる人もいるようですが、私は気が小さいので、そのようなシフトは組めませんでした(本当です……念のため)。

 自分の担当日に日本一が決まるかは別として、前回書いたようにCSからスタンドの雰囲気がレギュラーシーズンとは比べものにならない盛り上がりを見せる中での実況は、自然と力が入ります。

 また解説者とは別に、日本シリーズ進出が果たせなかったチームの現役選手をプレイヤーズゲストとして招くことも多かったので、普段とは違う話が聞けるのも日本シリーズ実況の楽しみの一つでした。

 実況アナウンサーの気持ちは、まさに「今年の集大成」。日本シリーズまで連れてきてくれたチームへの感謝とともに、その年の実況を終えることになります。

 ちなみに、私は日本シリーズでドラゴンズ胴上げを実況する機会には恵まれませんでした。

 ただ、2010年のドラゴンズ―マリーンズ第6戦。延長15回、5時間43分のシリーズ最長試合を担当したことは一番の思い出です。このシリーズではマリーンズがリーグ3位から下剋上を果たし、日本一になるのですが、接戦に次ぐ接戦で、この試合も長くなりました。試合後の談話なども伝えるため、実況を終えたときは日付が変わっていました。

 6時間以上しゃべり続けたのは、後にも先にもこの日だけでした。台本はなく、自分で用意した資料と事前取材をもとにしゃべり続けるスポーツ実況ですが、この日の経験が、自分はこれから本番中に何が起こっても怖くないという自信を与えてくれました。

中継局も減って…

 このような準備を経て、明日から日本シリーズが開幕するわけですが、私には残念なことが一つあります。

 それは日本シリーズを中継するラジオ局がどんどん減っていることです。かつて、日本シリーズはすべてのAMラジオ局で中継されていました。ところが2015年ごろから地元に球団のないローカル局が、まるで櫛の歯が欠けるように1局、また1局と中継しなくなり、ついにはローカル局での中継はなくなってしまいました。

 さらに地元に球団がある局でさえ、地元球団が出ていなければ中継しないという状況になりました。私の古巣、東海ラジオも例外ではなく、去年からドラゴンズが出ない場合は中継しなくなっています。

 昔と違って、ネット中継も含め、多様な方法で中継が行われる「時代の流れ」なのでしょうが、どんなに時代が変わっても現場のアナウンサーをはじめスタッフは、変わらぬモチベーションで試合をお届けしようと頑張っています。

 シーズンの集大成ともいえる中継をお届けできる機会が年々減っているという現状が、元ラジオアナウンサーとして残念でなりません。

村上和宏(むらかみ・かずひろ)
フリーアナウンサー。1967年、広島県出身。専修大学法学部卒業後、91年に東海ラジオ放送入社。制作局アナウンサーとして、主にスポーツ実況を担当。2025年の退社まで、プロ野球をメインに多くの番組制作に携わった。現在、バンテリンドームナゴヤのDAZNドラゴンズ戦実況、「プロ野球ニュース」(フジテレビONE)などに出演中。

デイリー新潮編集部

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