実況を終えた時には「日付が変わっていました」…監督・選手はもちろんアナウンサーにとっても「日本シリーズ」は特別な舞台 「実況アナなら“胴上げを実況したい”というのが人情です」

  • ブックマーク

 いよいよ明日から日本シリーズ! 日本一連覇を狙う福岡ソフトバンクと、リーグ3位からクライマックスシリーズを駆けあがった横浜DeNA、今年の日本一をかけて闘います。野球界最大のイベントでもある日本シリーズですが、その中継の舞台裏はどうなっているのでしょうか。東海ラジオで35年間、プロ野球実況を担当した村上和宏さんが解説します。

座席を確保

 明日から今年のプロ野球の天王山、日本シリーズが始まります。

 クライマックスシリーズ(CS)が導入される前は、リーグ優勝=日本シリーズ進出なので、NPBと球団運営側はシリーズに向けての準備を日程に合わせて進めることができましたが、CSが始まってからは、優勝=日本シリーズの保証がなくなり、2位、3位のチームも、出場の可能性がある間はシリーズに向けて準備を進める必要が出てきました。

 一言で「準備」といっても、あれだけの観客を迎える一大イベントですから、そう簡単なものではありません。中継する放送局側も同様です。

 毎年8月に入ると、CS進出の可能性がある球団の地元運動記者クラブ所属各社に、NPBから会議を開催する連絡が入ります。ペナントと異なり、日本シリーズはNPBが主催なのですが、その場合に報道各社に確保する客席と場所はどれくらい必要かをヒヤリングし、確定させるために、会議が開かれます。

 新聞社であれば、通常の試合よりもカメラマンの数を増やすため、カメラマン席だけでは足りなくなります。テレビ局も、中継用カメラの数を増やすため、どの位置にどのくらいの大きさのカメラを設置するかが重要になりますし、ラジオ局の場合は中継用の臨時放送席として客席を何席使うか、といった調整が必要になるのです。

 テレビカメラは大きな三脚に設置するため、カメラ1台につき横5席×縦5列程度の客席をつぶしてカメラを置かなければなりませんし、ラジオの臨時放送席はネット裏に横8~10列×縦2~3列の客席が必要となります。

 どこの席を何席確保するかを把握して、当該球場で日本シリーズが開催となった際、一般販売できる座席を事前に確定させておくことが大きな目的です。ちなみに報道用に確保した席は、利用する会社が一般販売と同じ金額で買うことになるので、NPBのチケット収入は報道用の席が何席になろうと変わりません。

 CS開催前は「優勝する可能性がある球団」が対象でしたから、8月になれば2~3球団には絞られましたが、CSに進出する3位までに入る可能性があるチームまで対象となると、特に混戦の場合は、対象チーム数が多くなります。今年の9月初めのセ・リーグのように、3位に入る可能性が最下位チームまで残っている場合は、全球団が対象になることもあります。

 この客席確保が、ラジオの場合、非常に煩雑になります。というのも、臨時放送席が必要となるか否か、様々なパターンで考えなければならないのです。

 私が長年、この座席調整に携わったドラゴンズの本拠地、バンテリンドームナゴヤを例にとると、相手が千葉ロッテマリーンズ以外の場合、地元の局が自前で中継するため、臨時放送席が必要になります。

 なぜマリーンズ以外かというと、私が所属していた東海ラジオのNRNネットワーク系列では、埼玉西武ライオンズは文化放送。北海道日本ハムファイターズはSTVラジオ。東北楽天イーグルスは東北放送。オリックスバファローズはABCラジオかMBSラジオ。福岡ソフトバンクホークスは九州朝日放送が自社スタッフで中継する可能性があるからです。

 ニッポン放送は対戦チームに関係なく、全試合自前で中継するため、普段、東海ラジオが使っている放送席とは別に、ニッポン放送ともう一局の放送席が必要になります。

 さらに、セ・リーグ本拠地での試合が3~5戦目の場合、また6、7戦でも局によっては「自社が応援するチームが日本一に王手をかけた場合のみ」という条件が付くのです。つまり何パターンも想定して「この場合は何席」「こうなったら何席」といくつもの状況を漏れなくシミュレーションして会議に臨む必要があります。

次ページ:アナウンサー選定の苦労

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]