「昭和の国民食」だったのに消費量が“100分の1に激減”…「クジラプリンセス」がおススメする“鯨肉”の新たな魅力とは

ビジネス

  • ブックマーク

おいしくて“不漁知らず”

 共同船舶が“クジプリ”に消費増への期待を込めるのにはわけがある。

 日本が独自の商業捕鯨を再開して7年――。近年の日本は南極海ではなく、領海と排他的経済水域(EEZ)内で、資源評価に基づいてナガスクジラやニタリクジラ、イワシクジラなど、年間三百数十頭のクジラを捕獲している。

 以前と比べて鯨肉を扱う店は増え、大手スーパーや鮮魚専門店などで赤肉やベーコン、握り寿司などが買えるようになったものの、まだ食卓でおなじみの食材とは言えない。クジラを扱う料理店が少ないのも事実だ。

 農林水産省のデータを見ると、鯨肉消費量は1960年代前半に年間20万トン以上あったものの、近年は年間およそ2000トンと1%以下に急減。クジラの味を懐かしむ声も少なくなっている。

 ただ、新鮮なクジラは「マグロと牛肉、両方のいいとこ取りをしたようなおいしさ」(井出万寿男・共同船舶広報担当アドバイザー)との声も上がるなど、その味には定評がある。その上、サンマやサケ、イカなどと違って、海水温の上昇をはじめとした海洋環境の変化に左右されにくい資源だ。

 水産庁によると、現在のクジラの捕獲上限は「100年間、毎年捕ってもクジラの資源は減らないレベルに設定している」のだという。クジラは旬と呼べる時期はないが、おいしさだけでなく、近年は健康面での貢献度も明らかになりつつある。

規格外の“健康機能”

 共同船舶などが専門機関の協力を得て行った研究では、鯨油に含まれるドコサペンタエン酸(DPA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が、生活習慣病予防に加え、美肌や育毛の効果も報告されており、大きなポテンシャルを秘めている。

 これら「多価不飽和脂肪酸」のほか、クジラの赤肉に含まれる特有の成分・バレニンの働きにも注目が集まっている。バレニンは、クジラが休むことなく泳ぎ続けられるパワーの源とされ、摂取すると長寿遺伝子と呼ばれる「サーチュイン遺伝子」の発現を促進する可能性が示されている。その効果については、疲労感の軽減や認知症の予防、睡眠の質向上、集中力アップなど多岐にわたることが示唆されている。もともとクジラの赤肉は高タンパク・低カロリーで、アスリートの愛好者も多い。

 赤肉販売も行う“クジプリ”こと西岡さんによると「最近、鯨肉はボディメイク界でもその効果が話題となっており、“減量食に最適”“筋肉の張りが変わる”といった反応があって好評。クジラを食べて、疲労の回復や筋肉の増強に役立ててほしい」と期待している。

 クジプリとしての今後の取り組みについては、「鯨肉は昭和の食べ物&生臭い、というイメージがあるが、捕鯨母船・関鯨丸のおかげで、昔とは違って鮮度が良くなっているため、臭みもなく美味しい鯨肉が味わえるようになった。新時代のたんぱく源、そして美容食としても、若い世代に広めながら、『肉の定番』となるようPRしていきたい」(西岡さん)と抱負を語っている。

 共同船舶の所英樹社長は、「クジラはおいしい薬」と評し、今後も「大学などと連携しながら、クジラの健康機能に関するエビデンスの蓄積や効果に関する周知を進めていく」と話す。その一方、西岡さんについては、「すごくやる気を感じる。消費拡大への切り札として、今後も健康機能を含めて若い人たちへクジラの魅力を最大限、伝えてもらいたい」と期待を込めている。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文藝春秋)。最新刊に『国産の魚はどこへ消えたか?』(講談社+α新書)がある。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。