妻が家に連れてきた21歳女性に「寝たって言う」と脅されて…深夜の呼び出し、秘密を重ねる58歳夫の壊れかけた家庭

  • ブックマーク

妻とは「親友みたいな感じ」

 それでも今の「世間的な幸福に満ちた家庭」を捨てる勇気も、捨てる機会もなかった。このまま楽しいと思い込みながら生きていこうと彼は腹をくくった。

「子どもたちのことは心から大事に思っていました。成長過程もおもしろかった。生意気盛りになると、それも興味深かったし。たいしていい父親ではなかったかもしれないけど、母にネグレクトされているのをわかりながら、関わろうとしなかった父親のようにだけはなるまいと決めていたから、子どもの声を無視したことはありません」

 2年ほど前、大学生の息子が20歳になり、娘は高校を卒業して専門学校へ進んだ。もう親の出番はほとんどないかもしれないが、子どもたちを社会に出すまでが親の責任だろうと景太郎さんは感じていた。佐保さんは、下の子が中学生になったころから近所の飲食店でパートとして働くようになった。その後、調理師や食品衛生管理の資格もとり、積極的に仕事に関わっていった。

「佐保とは、そのころから親友みたいな感じですね。僕がまがりなりにも人として親として、なんとかやってこられたのは妻のおかげだと思っています」

ところが「エリカさんのような女性」に出会う

 このまま定年までつつがなく勤めあげ、あとは妻とともに老いていこう。そんなふうに思っていた矢先、彼はエリカさんのような女性に出会ってしまう。神様なんているのかなと思いますよと景太郎さんは低い声でつぶやいた。浮気ひとつせず、まじめにがんばってきたのに、どうして再び、あのような思いをしなければならないのだろう。エリカさんとの一件は、50代半ばを超えても彼の脳裏にくっきりと焼きついていたのだという。

「実は、今回の由希は妻が働いている飲食店での同僚なんです。21歳の彼女はアルバイトで、高校を中退しているんだそう。妻が家に連れてきたんですよ。この子に勉強を教えてやってくれないかって」

 由希さんは両親の離婚を機に、入学して1ヶ月で高校へ行かなくなり、繁華街で遊びほうけるようになった。母方の祖母が心配して2人で暮らしていたのだが、18歳のとき、その祖母が急逝し、彼女はひとりきりになってしまった。そこからは荒れる気力も失せて家にとじこもっていたのだという。飲食店のオーナー夫婦が、近所に住んでいる由希さんを心配して店に来れば食事をさせる。その代わり店を手伝ってほしいという条件を出し、由希さんが来るようになった。

「オーナー夫婦も佐保も、由希を心からかわいがったんです。そうしたら由希が、もう一度高校に行きたいと言い出した。だから勉強を見てあげてと。もちろん、佐保がいるときに限って家に上げるようにしていました。娘と同世代なんだけど娘は専門学校が忙しくて、なかなか由希と親しくなる時間がなかったし、息子も大学とアルバイトで忙しい。それで僕ら夫婦が由希の勉強を見ることになったんです。週に2日ほど、由希は家にやってきました」

次ページ:どこかで見た瞳

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。