ただの「貧乏弁当」ではない…ローソン“297円弁当”はなぜ鮭、ソーセージ、コーン? 商品開発のプロが読み解く“設計思想”
米価が下がれば、弁当も安くできる?
この価格を考えるうえでは、米価の変化も見逃せない。農林水産省が公表したスーパーのPOSデータによると、2026年9月14~20日の米5キロの平均販売価格は税込2,934円。1年前より1,312円安かった。
スーパーの店頭価格が、そのままコンビニ工場の米の仕入れ価格になるわけではない。ただ、米の市場価格が下がれば、ご飯の比率が高い商品の価格を見直す余地は生まれる。ファミリーマートは9月22日から一部のおむすびを税込11円値下げし、ローソンも9月29日から手巻おにぎり全品を一律10円値下げした。
おにぎりは原材料に占める米の割合が大きい。一方、おかずが何種類も入った弁当には、肉や魚、野菜、調理や盛り付けの手間など、米以外のコストも多い。米価が下がったからといって、通常の弁当を大幅に安くするのは難しい。
その点、ご飯をしっかり入れ、おかずを一つに絞った弁当は、米価の変化を生かしやすい設計だ。ただし、297円という価格がどの程度、米価の低下によって可能になったのかは、外からは分からない。確かなのは、食材と工程の両方を絞ることで、低価格を実現しようとしていることだ。
297円と994円が同じ店に並ぶ理由
ここまで低価格を追求したローソンだが、実は安い商品だけを増やしているわけではない。同じ時期に、3種類の肉を使った「贅沢すぎ!肉づくし冷し中華」と、海老、イカ、あさりを使った「贅沢すぎ!海鮮づくしペスカトーレ」を、それぞれ税込797円で発売した。「肉オールスター弁当」は994円だ。
297円の弁当と1,000円近い弁当が、同じ店に並ぶ。毎日の昼食にはできるだけお金をかけたくない人もいれば、「今日は食べたいものを買おう」と考える人もいる。同じ人でも、日によって使い分けるだろう。ローソンはその両方に商品を用意している。
背景には、食費が家計に与える重さの違いもある。総務省の家計調査によると、2025年の二人以上世帯のエンゲル係数は28.6%。年間収入280万円未満の層では34.4%、1,152万円以上の層では24.1%だった。同じ食料品の値上がりでも、受け止め方は家計によって異なる。
所得による節約の切実さの違いと、同じ人が「普段の節約」と「たまの贅沢」を使い分けるメリハリ消費。その両方に応えようとすると、売り場には297円と994円の弁当が並ぶことになる。もちろん、低価格を競うだけでは、工場や物流、加盟店に負担がかかりかねない。今回注目したいのは値札の安さそのものより、価格を抑えられる形を商品開発の段階から考えたことだ。
食費を切り詰めなければならない暮らしが広がっているのなら、その現実を喜ぶことはできない。ただ、食費を抑えたい人にとって、身近なコンビニで297円の弁当を買えることは助けになる。安くお腹を満たしたい日はこの弁当を選び、少し贅沢をしたい日は別の商品を選ぶ。副菜が欲しければ、自分で足すこともできる。筆者が評価したいのは、その選択肢を増やしたことだ。297円弁当は、ただの「貧乏弁当」ではない。限られた予算に、商品開発の工夫で応えた弁当なのである。






