「粗食は寿命を縮める!」「筋力低下を測る基準は…」 寿命を延ばす「歩き方」を専門家が解説

ドクター新潮 ライフ

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靴選びの重要性

 話を戻せば、転倒のリスクを回避するのに筋力をつける必要があります。お手軽にまず歩くことからですが、よくいわれる「1日1万歩健康説」には明確な根拠はありません。おおむね歩行時に使われる筋力は、自分が出せる最大筋力の30%に過ぎませんので、ただ歩いているだけでは転倒を防ぐために本当に必要な筋肉が鍛えられていないのです。

 重視すべきは、1日5000歩でも構わないので、「METs(メッツ)」を上げる歩き方をすることです。メッツとは運動強度の目安となる指標です。普通の歩行なら3メッツ、速歩なら4.3メッツ、かなり速歩なら5メッツです。5メッツ以上の人は長生きするというデータがあります。

 ポイントは、転びにくい靴を選ぶこと。歩く時には太ももを上げ、かかと、足裏、つま先という順番で地面に接するのが理想です。

 ウォーキングでは歩数を気にしなくてもかまいません。先に申し上げたように、拳1個分(約10センチ)歩幅を広げると歩くスピードも上がり、下半身の筋肉への刺激が確実に増えるのです。しかも汗をかくほど歩いて代謝を上げると、認知症や糖尿病、高血圧の予防にも効くので、お金がかからない一番良い方法です。

 お手軽にと言いましたが、本当はスクワットをやってほしい。歩きはそれほど筋肉を使わないので、一番良いのは片足立ちやスクワット。ゆっくり3秒かけて椅子から立ち上がり、今度は3秒かけてゆっくり座る。テレビを見ながらCMの間に繰り返すと習慣になるのではないでしょうか。2~3分の間にやればけっこう回数が稼げます。

太ももとふくらはぎ、背筋の3点

 私は脳卒中後遺症が専門ですが、脳卒中で入院した人の退院の目安は、トイレの自立または部屋の中を歩けることです。私たちは、発症して急性期の治療をやりながら、リハビリを早い人ならもうその日のうちに始めます。その方が、回復が早いんですね。昔は、リハビリを早くにやると頭に血液がいかなくなるので1カ月くらい安静にしなさいといわれていましたが、そうすると筋力がなくなるので、寝たきりになってしまいます。

 老化による転倒は、「筋力の低下」「柔軟力(関節の可動域)の低下」「バランス能力の低下」が深く関係しています。この三つを同時に衰えさせないために、私は誰でもできる12種類の「セルフリハビリテーション」をお薦めしています。

 柔軟力を高める「のびのびストレッチ」(4種類)、筋力を高める「ゆる筋トレ」(5種類)、バランス能力を高める「ふらふら防止体操」(3種類)を提唱していますが、いずれも特別な道具は使わない、誰でも一人でできる、短時間で効率よく効果が出るというものです。詳しくは拙著『歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方』(アスコム)に書きましたが、12種類というと大変と思われるかもしれません。要は背筋(そっくり返る力)と太もも、ふくらはぎ(足を上げる力)の筋肉を鍛えることが歩くための筋力として重要で、初めのうちはストレッチを1~2種類やるだけでも十分です。

 ストレッチには「体幹のストレッチ」「首のストレッチ」「股関節のストレッチ」「太もものストレッチ」の4種類があります。何もしないより少しでも始めること。それが体を変える一番の近道です。

 または、誰もが知っていると思いますが、ラジオ体操第1をやると良いです。それぞれの動作に基本的なストレッチのエッセンスが詰まっています。一生懸命真剣に2回やれば4メッツくらいの運動量になります。

 私は脊髄損傷で歩けるか歩けないかのギリギリの患者さんも診ています。この人が歩けるようになるか、ならないかを判断するわけですが、その時に絶対的に必要な筋力が太ももとふくらはぎ、それとそっくり返る力(背筋)なんですよ。そこで歩けるようになるかがすぐに分かります。だから、歩けるようになるからこのぐらいやりましょうと言ってリハビリの訓練メニューをつくります。逆に言うと、太ももとふくらはぎ、背筋を整えておけば、年を取っても「死ぬまで歩ける体」をつくることができるのです。

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