「私じゃなかったらもっと金利は上がっていた」片山さつき財務相は自信を深め…高市首相との間に“隙間風”でも交代させられなかった理由
米国から「円安を止めてくれ」
この事態に我慢ならなかったのが米国である。9月2日未明(現地時間1日)、ベッセント財務長官が20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後会見で突如、次のように言い放ったのだ。
「アベノミクスで大きな成功を収めたのだから、今はその成果を生かしてリフレ政策をやめるべきだと(日本側に)伝えた」
東短リサーチ株式会社代表取締役社長でチーフエコノミストの加藤出氏が言う。
「ベッセント氏の要求は非常にシンプル。“円安を止めてくれ”ということに尽きます。今、米国は各国の関税を引き上げて、貿易収支の改善を図っています。しかし、円安が進むと日米間の貿易収支は改善しにくくなる。また、日本政府が円安を止めるために為替介入で円を買い、米国債を売却すれば米国の長期金利が上昇する要因にもなる。米国はそのような事態を避けたいわけです」
“ベッセント発言”を受けて円は急伸。しかし、
「佐藤啓官房副長官(当時)は番記者を相手に発言の和訳を示しながら、『報道のニュアンスが違う』と注文をつけました。官邸・財務省は発言が高市政権の積極財政路線を否定するものではないとして、火消しに躍起になっています」(政治部デスク)
経済財政諮問会議の民間議員で、第一ライフ資産運用経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏はこんな見方を示す。
「今の日本はリフレ政策を採用していません。たしかにアベノミクスの金融緩和では、日銀が民間銀行などから大量の国債を購入。その代金を日銀当座預金に振り込むことで、マネタリーベースを大幅に増やしました。現在は反対に、日銀は年間40兆~50兆円のペースで国債保有額を減らしており、利上げと合わせて金融政策の正常化を進めています」
米国と首相との間で板挟み
片山氏は4日の閣議後会見で、
「(ベッセント氏から)タカイチノミクスを評価していただいた。私が要求をもらったり、問い詰められたりしたことは全くない」
そう述べた。しかし、9月1日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、ベッセント氏が5月の訪日時点で、片山氏に対して高市政権の経済政策への不満を示していたと報じている。
明海大学教授で、アメリカ研究や外交・安全保障政策を専門とする小谷哲男氏はこう指摘する。
「今回の“ベッセント発言”は、高市政権が進める積極財政に強い危機感を示したものです。もし問題がアベノミクス以来のリフレ政策だけだったのであれば、米国は石破政権の時から苦言を呈していたはずです。一方、片山氏は財務相として積極財政を推し進める立場にある。まさに米国と高市首相との間で板挟みの状態です」
慶應義塾大学大学院教授の小幡績氏もこう語る。
「NYTの報道などを踏まえると、ベッセント氏には“片山氏と話をして、日本は円安の問題や利上げの必要性は理解していると思っていた。なのに、肝心の高市首相が全然分かっていないじゃないか”といういら立ちがあるのではないでしょうか。片山氏が米国の懸念に理解を示しながら、高市政権の財政政策も擁護しなければならない難しい立場に置かれているのは事実でしょう」
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