WBC「ベスト8敗退」も影響か…NPB“ピッチクロック”導入で投手だけでは済まない余波…「バッターは制限時間が残り8秒を切るまでに……」
導入で困るのは…
一方、バッター側は、制限時間が残り8秒になるまでに打席の準備(つまり構えること)を済ませなければなりません。打撃体勢がとれていないと判断されると1ストライクが宣告されます。また、1打席につき1回しかタイムを取ることができません。
「ピッチクロック」がMLBで導入された理由はただ一つ、「試合時間短縮」です。MLBはアメリカ3大プロスポーツの一つであり、人気も高いことは言うまでもないですが、他のプロスポーツと比較して決定的な違いがあります。
NBA(バスケットボール)は1クオーター12分×4で48分、NFL(アメリカンフットボール)は1クオーター15分×4で60分とプレー時間が決まっています。実際の試合ではプレーが止まることもあれば、ハーフタイムショーがあるので試合終了までの実質的な時間は単純計算できないとはいえ、野球に比べはるかに短くなります。
MLBは長時間の試合に観客が飽きたり、ファンが減ったりすることに危惧を覚え、試合時間短縮の決定打として「ピッチクロック」というルールを定めたのです。
この「ピッチクロック」をNPBでも導入するための協議が行われているわけですが、これまで、NPBが試合時間短縮に向けたルールを全く定めていなかったわけではありません。
ルール上、現在でも攻守交代は2分15秒以内、イニング途中の投手交代は2分45秒以内にプレーを再開すると定められています。投球間隔については、野球規則には「ランナーがいないときはボールを受け取ってから12秒以内に投球動作に入ること」との条文がありますが、NPBは「ボールを受け取ってから15秒以内に投球動作に移ること」という、いわゆる「15秒ルール」を定めています。
テレビ中継でベンチの中が映った際、ベンチ裏へ抜ける通路にポスターが貼ってあるのが見えることがあります。そのポスターは、このルールを含め試合時間短縮に努めるようNPBが作成した啓蒙ポスターです。
ただ、こうしたNPBの定めたルールは厳密に運用されているとは言えません。私も長年NPBを取材していますが、適用された場面は見たことがありません。だからこそ厳密に運用できるルールとして「ピッチクロック」の導入が決まったわけです。
現実問題として「ピッチクロック」が導入された場合、特にピッチャー側に戸惑う選手が少なからずいると思います。
我々、実況アナウンサーは、担当日の先発ピッチャーの名前を見て「今日は早く終わりそうだ」とか「今日は長い試合になりそうだ」と感じます。ピッチャーによってやたら投球間隔が長い、サインに首を振ってなかなか決まらないなど、各投手の特徴を知っているからです。
自分のリズムとして投げるまでのルーティンが長い、あるいはバッターをじらすため、わざとなかなか投げないというピッチャーは多くいます。プロの世界で長年続けてきた自分のいわゆる「習慣」を変えることは容易ではないと思います。
仮に来シーズン冒頭から「ピッチクロック」が導入された場合、この新ルールにいかに適応できるかが個人の成績に大きく影響するのではないでしょうか。
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