【決定版】「オール沖縄」はなぜ完敗したのか…保革連合からの変質、“辺野古転覆事故”の影響だけではない「玉城デニー」が敗れた“不都合な真実”
抗議船転覆事故の影響も
今年3月、辺野古沖で、オール沖縄の一員である団体が運航していた抗議船が転覆し、修学旅行中の高校生と船長が亡くなるという痛ましい事故が起きた。出口調査では、有権者の61%がこの事故を投票の判断材料として考慮したと答えている。これは基地問題そのものへの賛否とは別に、基地反対運動を担ってきた側の運営や安全管理そのものへの信頼が傷ついたということだ。緩やかに進んできた他の変化とは違い、この事故は短期間で有権者の受け止め方を変えた出来事として重い。
NHKが分析したところ、よく再生された動画では、玉城氏に不利な内容の再生回数が、有利な内容のおよそ38倍にのぼっていた。ただし、これはSNSがゼロから玉城氏への反対派を作り出したという話ではない。出口調査では、玉城県政を「評価する」と答えた人が62%いたにもかかわらず、そのうちの4割は古謝氏に投票していた。つまり、もともと「今の県政に大きな不満はないが、そろそろ変えてもいいかもしれない」という緩やかな気持ちを持っていた人たちに対し、SNS上で繰り返し流れる玉城氏への疑問や批判が、その背中を押す役割を果たした、と考える方が正確だろう。
もう一つ見逃せないのは、基地反対と沖縄らしさを訴える従来のやり方に代わる、SNSで広まりやすい新しい訴え方を、玉城氏の側が用意できなかったという点である。負けたのはSNSの運用技術ではない。語るべき物語の方だった。
古謝氏の家族が果たした役割
妻・亜希子さんや長女の活躍も見逃せない。亜希子さんは声を震わせ、手を震わせながら、涙を浮かべて夫の20年の歩みを語り、「自分の人生は沖縄を豊かにするために使いたい」という夫の思いを支え続けてきたと訴える。終盤には、自他共に「平和の使者」を任ずる玉城候補を意識してか、「5人の子供の父である玄太なら、沖縄を戦争に巻きこむことはけっしてありません」と訴えた。その姿は、単なる「泣き落とし」という言葉ではけっして片付けられない。彼女の言葉にはしなやかな強靭ささえ垣間見られ、聴く者を感動の渦に巻きこんだ。併せて、切々と父・玄太氏の生真面目でやさしい人柄を熱く語る長女の姿も忘れられない。
こうした妻子のスピーチは、官僚出身の硬い候補者像を、人間味のある物語として補ってあまりある役割を果たした。この評価は陣営の内外で共有されており、政界関係者の間でも二人の存在を重く見る向きがあったほどだ。もっとも、今回の票差は14万7000票である。妻子のスピーチがこの差を作り出したわけではない。ここまで述べてきた構造的な変化が用意した流れの上で、官僚出身という古謝氏の弱点を補い、迷っていた有権者の最後の一押しになった――そう位置づけるのが正確だろう。
第2回【「オール沖縄」は役目を終えた…「高市が悪い」だけでは説明できない沖縄県知事選の完敗 “人のせいにできない”時代に「古謝玄太氏」は県政を牽引できるか】では、新たな局面を迎えた沖縄県政について深掘りしている。
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