どうやっても視聴率が上がらない フジのドラマ低迷に他局関係者「時代の空気をキャッチアップできなくなっている」

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流行をつくれない

 テレビは本来、「流行をつくる、追う、浸透させる」メディアなのだ。フジは一番よく分かっていたはずだ。

 たとえば「東京ラブストーリー」(1991年)では、鈴木保奈美(60)演じる赤名リカの「カ~ンチ~」が流行語になった。同「101回目のプロポーズ」(1991年)で武田鉄矢(77)が叫んだ「僕は死にましぇん!」もそうだ。

 今、フジのドラマからは流行が生まれない。リメイクからは生まれるはずもない。ヒットドラマもない。春ドラマ5本も、すべて平均個人視聴率が3%を超えられなかった。

 フジは10年連続で、在京5局の中で4位という深刻な状態にある。一方で戦略に誤りはないと考えているらしく、10月からは江口洋介(58)と松嶋菜々子(52)がダブル主演する「救命病棟24時」が13年ぶりに復活する。もっとも、明暗両面の過去をリセットし、新たな時代を創出すべきではないか。

 小池栄子(45)主演の「さよならノワール」(放送終了)は、地上波としては稀なハードボイルドタッチで、快作だったが、平均個人視聴率は1.5%だった。

 火曜午後9時の前作「夫婦別姓刑事」の衝突劇が尾を引いたか。少なくとも放送枠のイメージダウンになったのは間違いない。

 テレビは典型的なイメージ産業でもあるから、イメージダウンは視聴者離れに直結する。事実、「楽しくなければテレビじゃない」などをスローガンとした1980年代のフジのイメージ作戦は大当たりし、視聴率も伸びた。他局も追従した。

 現在のフジはイメージを大切にしているとは思えない。突かれたら言い逃れが難しいであろう危うい点がいくつもある。昨年1月に深刻化した元タレントの絡む人権侵害問題によるイメージダウンも長い影を落としている。それなのに局内には「自分たちは悪くなかった」という声がある。

 TBSも1995年にオウムビデオ問題が発覚すると、視聴率が落ち、ドラマのロケ現場では観衆から罵声を浴びた。ただし、同局はかなり大がかりな組織改革を断行し、社員研修や人材育成も強化。厳格な自己検証番組「TBSレビュー」(第2、第4日曜午前5時40分)も始めた。

 TBSはビデオ問題を「個人のモラル」だけでなく「組織・機能の欠陥」と捉えたからである。これにより、再生への足掛かりをつくった。フジはどうだろう。

「Tokyo middle 30」(水曜午後10時)は大いに期待した。原作が30歳の女性3人を描いた中国の大ヒットドラマ「Nothing But Thirty(30女の思うこと~上海女子物語~)」だったからだ。原作は中国で大きな反響を呼んだ作品である。もっとも、「Tokyo middle 30」は1.5%である。

 仲里依紗(36)、のん(33)、深川麻衣(35)が演じる35歳の女性たちの上京物語。原作との大きな違いは、中国版が結婚、仕事、階層など30歳の女性が直面する問題を現実的に描いたのに対し、「Tokyo middle 30」は3人の友情を強く打ち出したこと。それにより、既視感のあるドラマになってしまったように思う。

「ラストノート」(木曜午後10時)は、内田有紀(50)が演じる女性と寺西拓人(31)扮する男性の間に恋愛感情が芽生える。平均個人視聴率は1.8%。この類いのドラマは当たる空気が漂う時期と、そうでない時期がある。「VIVANT」のような刺激的なドラマや、現実味のある職業ドラマがヒットする中、男女の胸の内を描くストレートなドラマは厳しかったのではないか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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