「ノーベル化学賞より研究の満足度」 化学者・白川英樹さんが逝去 「世紀の大発見を生んだ偶然とは」
偶然から生まれた大発見
東京工業大学(現・東京科学大学)に進む。67年の助手時代、ポリアセチレンの合成実験の指導にあたっていたところ、留学生が白川さんの指示を間違え、本来生じない薄膜ができた。白川さんは実験の失敗で終わらせず、自ら再現して薄膜の特性を徹底して調べた。
「偶然から何かを見つけ出す能力があったと感じます。先入観を持たず、粘り強く対象に接した」(中野さん)
75年、来日中のアメリカの化学者が白川さんの研究に驚き、共同研究を提案。翌年、白川さんの薄膜を基に高い導電性を持つプラスチックの開発に至った。
以後、ノーベル賞受賞まで20年余り。白川さんは82年から筑波大学で教授を務め、基礎研究を続けた。
弟子にあたり、現在筑波大学名誉教授の赤木和夫さんは、受賞時、本誌(「週刊新潮」)の取材に〈先生は他人の評価を気にすることなく、自分の研究哲学に邁進(まいしん)された。(中略)常に自分に対する自分の評価。つまり研究に対する満足度を考えてやってきた方なんですよ〉と話す。
良き教育者でもあった。日本にも独創性はあるのに、出る杭は打たれるという風潮につぶされている。もっと長所を評価した方がよい、と再三語っている。
東京の日本未来科学館などで、小学生にも高度な内容を損なわず分かりやすく化学を解説する活動を、今年の夏も続けていた。
8月24日、90歳で逝去。
「よく観察し よく記録し よく調べ そしてよく考えよう」とは白川さんが語りかけた言葉。簡潔にして化学へ向き合う神髄がある。
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