戦火が燃え広がる時代に、鬼才・塚本晋也監督が世界に問う話題作「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 “加害者”の目線で描かれた戦争の衝撃

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 9月11日(金)より公開される映画「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」が話題になっている。戦争を独自の視点で描きつづけて、世界中で評価されている塚本晋也監督の最新作だ。現在開催中の第83回ヴェネツィア国際映画祭の長編コンペティション部門に正式出品され、上映後、8分間ものスタンディング・オベーションがあったと報じられた。

 この作品は、ベトナム戦争の帰還兵、アレン・ネルソンさん(1947~2009)の同名自叙伝(2003年講談社刊→現・講談社文庫)が原作である。つまりノンフィクションをドラマ化したわけで、その点でも異色作といえるのだが、まず、当のアレン・ネルソンさんについて、原作に沿いながらご紹介しよう。

「知られるのが、恐ろしかった」

 原作は、映画同様、ベトナムから帰還後、荒れ果てたアレンさん(ロドニー・ヒックス/マーク・マーフィ=青年期)の生活からはじまる。除隊後、家にもどったものの、母からは「おまえはもう、わたしの子どもじゃない」と避けられる。

〈母は、笑みをうかべたわたしの仮面の向こう側に、軍隊によって洗脳された殺人者の体臭と、ぬぐっても消えないおびただしい血のにおいとを、すぐにかぎとったのです。わたしはもう、あの無邪気なアレンではなかったのです。〉(講談社文庫版・同名原作本より。以下同)

 そのうえベトナムでの悪夢が頭から離れず、アレンさんは放心状態のようになり、ホームレス生活に陥る。現在でいうPTSD(心的外傷後ストレス障害)である。

 あるとき、高校時代の同級生の女性と出会う。彼女は小学校の先生で、生徒たちにベトナム戦争の体験談を話してほしいという。当初は拒むアレンさんだったが、熱心な求めに応じて、教室に向かう。だが、戦争がいかに悲しいものであるかといった〈きれいごとばかりを語りつづけました。〉

〈それは相手が子どもたちだからであり、ほんとうの戦争の話、つまり、ベトコン兵の死体がバラバラになっていたり、敵の死者数を調べるためにそのバラバラになった首や腕や足や胴体を集めたりするような話は、とうてい彼らにはたえられないだろうし、すべきではないと思ったからでした。/そしてなによりも、それをしたのが彼らの目の前にいる、ほかでもないわたしであることを知られるのがおそろしかったのです。〉

 それでも子どもたちは熱心に聞き入ってくれて、拍手をおくってくれた。いくつかの質問があったが、最後に、ひとりの女の子が起立して、質問した。

〈「ミスター・ネルソン」
 女の子はまばたきもせず、わたしをまっすぐに見つめると、たずねました。それは。わたしにとって運命的な質問でした。
「あなたは、人を殺しましたか?」
 だれかにおなかをなぐられたような感じがしました。〉

 ここは、原作同様、映画でもとても衝撃的なシーンである。

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