戦火が燃え広がる時代に、鬼才・塚本晋也監督が世界に問う話題作「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 “加害者”の目線で描かれた戦争の衝撃
PTSDをいかにして乗り越えていくか
〈アメリカのテレビニュースに沖縄のことが登場することなど、ほとんどありませんでしたから、わたしはとてもおどろくとともに、沖縄にまだ基地があり、アメリカ兵がいるという事実を意外に感じたのでした。ベトナム戦争が終わって二十年もたっているのだから、当然、アメリカ軍は沖縄から撤収しているものと思いこんでいたのでした。〉
これをきっかけに、アレン・ネルソンさんは、平和運動の仲間のサポートを得て、1996年、講演のためにふたたび沖縄の地を踏むのだった。以後、日本中を講演活動でまわり、憲法9条を守る運動、沖縄から米軍基地をなくす運動に従事する。その過程で、仏教に理解を示すようになり、遺言で、先述の福井のお寺に遺骨が納められることになったのだった。
映画をいち早く試写で見た、ベテランの映画ジャーナリスト氏は、こんな感想を述べてくれた。
「てっきり、『地獄の黙示録』『プラトーン』『フルメタル・ジャケット』『ディア・ハンター』のような、ベトナム戦争をリアルに描く映画だと思っていました。しかし、よい意味で期待を裏切られました。たしかに最前線の凄惨な戦闘シーンも出てきますが、それよりも、戦争は人間の精神をいかに傷めるか、そして、それを乗り越えることがいかにたいへんなことかを描くことで、戦争の虚しさを訴える作品でした。特に、講演活動をおこなう父ネルソンさんを理解できなかった息子が、あることをきっかけに“和解”するシーンはほんとうに感動的で、ああ、塚本監督は、ここを描きたかったのだなと、涙が止まりませんでした。脚本も塚本監督自身ですが、見事な構成だと思います」
塚本晋也監督も、プレス資料のインタビューで、こう述べている。
「本作では、アレンさんを偉人として描くのではなく、戦場での真実の体験と、PTSDを抱えた人がどう克服しようとしたかという個人的な映画として描きました。実際には平和活動に力を注ぎましたが、すべて個人の問題として描くことにしました。どんなことがあっても戦争はしたくないと思っている方、やるときはやらなければ、と思っている方、すべての人に観ていただきたいと思っています。ご覧いただいた方に“どう感じたか?”を問える映画になっているとうれしいです」
アラン・ネルソンさんは、2009年3月、多発性骨髄腫により、61歳の若さで亡くなった。ベトナムにおける枯れ葉剤の影響だともいわれている。
『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』
9月11日(金)よりkino cinéma 新宿ほか公開
(C)Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners (C)Allen Nelson/KODANSHA
製作:木下グループ 配給:キノフィルムズ
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