「特殊詐欺被害は1日10億円」「詐欺は“割の良い”犯罪」 作家・黒川博行×ノンフィクション作家・森 功 犯罪を追う二人が語る「トクリュウ」「地面師」
「半グレ」どころか「全グレ」
森 『流砂』の大きなテーマが、いわゆる「トクリュウ」ですね。固定した組織を持たず、SNSなどで実行役を集め、必要がなくなれば切り捨てる。今の犯罪を象徴する存在です。
黒川 僕は、日本全体がだんだんギャング化してると思っています。昔ながらのヤクザは高齢化して減っていますが、ヤクザと同じようなことをする人間は逆に増えてる。
森 そこには暴力団を取り巻く環境の変化もあるでしょうね。昔はいろいろなしのぎがあった。港湾、建設、土木。バブル期までは、そういうところで莫大(ばくだい)な金を稼げた。ところが日本社会が成熟して、そういう仕事がヤクザに回らなくなってきた。
黒川 それに暴排条項がものすごくきつい。ヤクザは銀行口座も作れないし、車も買えない。何をするにも引っかかる。昔だったら盃をもらって組に入っていたような連中が、「そんな割に合わないこと、誰がするんだ」となる。
森 ヤクザであること自体が商売として成立しにくくなったんでしょうね。
黒川 だから地下に潜る。特殊詐欺のチームを持ったり、半グレになったり、トクリュウに流れたりする。もう「半グレ」という言い方もおかしいと思いますけどね。やってることを見たら「全グレ」です。
森 しかもSNSがありますからね。昔なら犯罪に加わるにも、人間関係が必要だった。ところが今はネットで実行役を集められる。地面師の世界でも、最近は闇バイトでなりすまし役を募集するような事件が出てきている。犯罪の入口が非常に身近になっています。
「固定された階層から抜け出す手段が少ない」
黒川 昔みたいに誰かに弟子入りして、犯罪のノウハウを覚える必要すらない。スマホを見て、「闇バイト、やってみようかな」で犯罪の道に入ってしまう。
森 『流砂』の「おれ」も、まさにそうですよね。宗教2世で、恵まれた家庭環境でもなく、大学を中退している。社会の中でうまく居場所をつくれない人間が、犯罪に接続していく。
黒川 上下関係に縛られているヤクザはもちろん、一般社会でも日本は階層が固定されてると思うんですよ。そこから抜け出す手段が少ない。金もない、仕事もない、一発逆転する方法もない。そういうところに「簡単に稼げます」という闇バイトの募集が来たら、手を出す人間はいるでしょうね。
森 私の子供の友達にも、どうやって稼いでいるのか分からないけれど、タトゥーを入れて、いい格好をして、アルファードに乗っている若者がいるらしいんです。そういう世界って、実はかなり身近なところまで来ている。一方で、政治家や官僚、マスコミの人間には、そういう世界がなかなか見えていない。自分たちの生活圏から遠いんです。
黒川 上の階層からは下が見えない。下から上にも行けない――。そこも社会が分断されてるということだと思います。
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