甲子園の主役でも「一番人気」とは限らない ドラフトで横浜・織田翔希に“1位指名”が集中しにくい理由
希少性の高い野手に注目が
もちろん、織田自身の評価が低いわけではない。以前、別の記事を取材した際には、あるNPB球団のスカウトからこんな声が聞かれた。
「上位指名が確実な高校生は、織田翔希と平田玲翔(大分商)だけではないですかね」
当時から織田は高校生投手の中で抜けた存在と見られていた。夏の甲子園ではさらに球速を伸ばし、156キロまで到達している。
もう一つ、スカウトが挙げたのがポジションの希少性だった。
「投手と野手で比較した場合、希少性が高いのはやはり野手になります。特にホームランバッターや、キャッチャー、ショート、センターという要になるポジションを長く任せられる選手はなかなか出てきません。逆にピッチャーはある程度毎年候補が出てくる。そうなると、先になかなか出てこない野手を優先しようという考えにはなりやすいですよね」
実際、昨年は創価大の立石正広に3球団が競合。一昨年は明治大の遊撃手・宗山塁に5球団が入札した。
今年は立石や宗山ほど評価が突出したスラッガー、遊撃手は見当たらない。捕手では前述した渡部の評価が高く、センターでは明治大の榊原七斗、東京ガスの藤沢涼介らが注目を集めている。希少性を優先し、野手へ向かう球団が出てきても不思議ではない。
何球団が1位指名するか
高校生投手には、将来性と同時にリスクが伴う。
「高校生の場合は将来性がある一方で、プロで躓きやすいというリスクもあります。1位で指名された高校生投手でも、ソフトバンクの風間球打(明桜)、阪神の森木大智(高知)はすでに退団しています。そういう例を材料に、『高校生投手を1位で行くのはどうなんだ』と反対する人はいると思いますね」
風間、森木に加え、同学年の小園健太(市和歌山)は一軍定着を果たせていない。2016年にヤクルトから1位指名された寺島成輝(履正社)はすでに現役を退いている。
もちろん数人の例だけで高校生投手全体を語ることはできない。ただ、1位指名を決める場では、こうした近年の事例が判断材料になるという。
そして織田の場合、評価が分かれるポイントは球速以外にもある。
スカウトの中からは、テイクバックで右肩が大きく下がるフォームを気にする声が聞かれる。これだけ強いボールを投げられる一方、プロ入り後に長いシーズンを投げ抜くことを考えた時、フォームの再現性や身体への負担まで含めて慎重に見る球団は出てきそうだ。
投球以外のプレーについても課題を指摘する声がある。フィールディングやベースカバー、走者への対応など、プロの投手に求められる仕事はマウンド上の投球だけではない。高校生離れした球速を持っていても、ドラフト1位となれば、こうした部分まで含めた完成度が問われる。
156キロという数字だけを見れば文句なしの1位候補である。だが各球団が見るのは球速だけではない。即戦力を優先するのか、希少性の高い野手へ向かうのか、それとも織田の将来性に賭けるのか。
織田に何球団が入札するか。その数字には、各球団のドラフト戦略が色濃く表れそうだ。
<過去10年間に最初の入札で1位指名された高校生投手>
◇2016年
藤平尚真(楽天・1球団)
寺島成輝(ヤクルト・1球団)
今井達也(西武・1球団)
◇2017年、2018年
該当者なし
◇2019年
佐々木朗希(ロッテ・4球団)
奥川恭伸(ヤクルト・3球団)
◇2020年
高橋宏斗(中日・1球団)
◇2021年
小園健太(DeNA・2球団)
達孝太(日本ハム・1球団)
風間球打(ソフトバンク・1球団)
◇2022年
斉藤優汰(広島・1球団)
◇2023年、2024年
該当者なし
◇2025年
石垣元気(ロッテ・2球団)
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