【豊臣兄弟!】NHK禁断の歴史歪曲 「絶対に秀吉を裏切らない」部将をなぜ裏切り者に仕立ててしまったのか

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宣教師の記述を軽視したからか?

 だが、フロイスのこうした記述に対し、研究者たちの主張は「キリシタンであった高山右近の活躍を誇張して書くために、デマを記したと考えられる」というものだった。「豊臣兄弟!」では2人の錚々たる学者が「時代考証」を担当している。それなのに、中川清秀が秀吉を裏切るという、「時代考証」の視点からあってはならないフィクションが許容されたのは、宣教師はデマを書く、という呪縛から離れられず、秀吉に対する清秀の大恩を見逃したのかもしれない。

 しかし、宣教師は大げさに書くことはあっても、ウソは避けたと思われる。『日本史』では、清秀と恒興よりも右近の活躍を強調している。キリシタンに対する贔屓はたしかに認められる。だが、フロイスがなぜ記録を残したのかを考える必要がある。命を賭して東洋まで布教にきた彼らは、自分たちの後進が同じ東洋でまちがいなく布教できるように、ガイドを書き記した。後進たちのための道しるべであり羅針盤であるのが、彼らの記録なのであって、ウソを書いて後進を惑わすことなど、よほど人格がねじ曲がっている宣教師でなければ、なかったと思われる。

 日本の歴史研究者は宣教師の発想や考え方を知らないから、「宣教師がデマを記す」と思うのだろうが、筆者はこのことに以前から忸怩たる思いをいだいてきた。

 それはともかく、このように秀吉のもとにいれば、大いなる出世が見込めた中川清秀が秀吉を裏切ることなど、どうしてありえようか。

 記事の冒頭で紹介した、前田利家が清秀を刺殺する場面は、たしかに勝家を裏切って秀吉の軍門に下った利家の決意を強調するためには、効果的だった。だが、そのために、ありえない裏切り話を挿入して歴史への誤解を助長するのは、残念だというほかない。名誉を棄損された中川清秀も気の毒に思えてくる。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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