コメ農家への支援は「5キロ3500円を死守」 専門家が「コメ価格の高値維持がむしろ農家を苦しめる」と指摘する理由
備蓄米の買い戻し問題
何よりも水田の美しい景観は日本人にとって心の原風景であり、文字通りの“故郷”だ。「コメの生産が続けられるようにしてほしい」──コメ農家やJAの悲鳴を受け、ずっと燻り続けている政策が「備蓄米の早期買い戻し」だ。
コメの民間在庫量は6月末の時点で243万トンに達し、過去最大となっている。そして適正な在庫量は180万トンから200万トンという。
一方、備蓄米は100万トンの確保が求められている。ところが昨年に米価対策で放出されたことなどの影響で、30万トンまで減っている。
あくまで理論上の話だが、新米の収穫が本格的に始まる前、つまり今、在庫243万トンから備蓄米の不足分70万トンを買い入れたらどうなるか。差し引き173万トンになって適正在庫量を下回る。
実際はJAなどが「米価対策で放出された備蓄米約59万トンを早く買い戻してほしい」と訴えており、鈴木憲和農水相は公の場で買い戻しの必要性を認めた。(註1)
ところが、である。農業経済学者で宮城大学名誉教授の大泉一貫氏は、「高額の概算金が本当に日本のコメ農業を持続可能なものにするのか、根本から考え直す必要に迫られているのではないでしょうか」と言う。
農水省の政策は完全な間違い
「農水省は一貫して『コメの生産量を抑制することで価格を上昇させ、農家の収入を確保する』という政策を実施し、JAは支持してきました。一方、消費者はコメの価格が下がれば下がるほど歓迎します。現在の農政では農家と消費者が完全に対立してしまうという大きな欠陥がありますし、実はコメの販売価格を高止まりさせると、日本のコメ農家は逆に持続不可能になってしまう可能性があるのです。これまで農水省が行ってきた“コメ農家の保護政策”は果たして有効だったのか、徹底した検証と見直しが求められていると言えます」(同・大泉氏)
日本のコメ生産は1960年代に供給過剰が問題視され、70年代から減反政策が始まった。現在でも「生産調整」という名目で実質的な減反は続いており、コメの生産量を抑制する姿勢は変わっていない。
農水省と関係の深い「米穀安定供給確保支援機構」という公益社団法人がある。この米穀機構は3月、コメの生産コストを発表した。60キロで3万355円となり、これが流通すると5キロ3500円前後の小売価格になるという。
JA全農あきたは昨年7月、あきたこまちの新米を買い取る概算金を2万4000円前後と想定していたという。この価格ならコメ農家は営農を続けることが可能であり、店頭価格は5キロ3200円から3400円になる見通しだった。(註2)
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