「食品ロス削減」「SDGs」が浸透しても“キャベツに虫の喰った跡”があれば「返金しろ!」 スーパーに“高品質できれいな農作物”だけが並ぶことへの違和感
筆者は秋田県の出身なので農家の知り合いが多い。彼らに取材をしていると、農作物に対する消費者のカスタマーハラスメントや無茶な要求が年々増えており、それが農業関係者の悩みの種になっていると感じる。
もっともわかりやすく、深刻なのは「虫」関連の問題である。キャベツや白菜など、多くの野菜は屋外で栽培するため、どんなに気を使っても虫がついてしまうことは避けられない。だが、今や少しでも中に芋虫が入っていたり、葉に虫食いの跡があるだけで「返金しろ!」と、激怒する消費者が多いそうだ。
こうした異常なほどの潔癖症な消費者の増加は、生産者である農家、農産物を扱う農業関係者に大きな負担を与えている。【取材・文=山内貴範】
【写真】“虫食いの跡”で返品要求も…消費者の要望の結果店頭に並ぶようになったきれいな野菜
スーパーにもクレーム
「買った野菜に虫がついていた!」「虫が入るなんて、チェック体制や品質管理はどうなっているのか!」というクレームは、スーパーマーケットの店員にも多く寄せられるようだ。時期によっては、週に何回も交換や返金を要求するクレームがあるらしい。埼玉県内のスーパーで青果を扱うA氏がこう話す。
「虫は絶対についていてはいけないので、我々担当者は店頭に並ぶ前に入念にチェックします。鮮魚コーナーの担当者がアニサキスを確認するのと同じくらい、野菜の芋虫には気を配ります。ただ、店頭に並んだ時に芋虫がいなくても、お客さんの家で卵からかえってしまうケースもあるので厄介です。もちろん、クレームがあれば交換せざるを得ません。
最近は以前にも増して消費者の要求水準が上がりました。店頭でも真っ先に売れるのは、見た目がきれいな野菜や果物です。ホウレンソウなどは少しでも葉が黄色く変色していたり、リンゴは実の表面に傷がついていたりするだけで、見向きもされないのです」
そういった野菜や果物は最後まで残り、見切り品として値引きされるか、それでも売れない場合は廃棄される運命にある。そのため、なかには納入業者に対して、「見た目の悪いものを納入しないように」と、強く要求しているスーパーもあるのだという。
厳格な品質管理の功罪
見た目が悪い農産物は買いたくない、しかし価格が高いと困る――そうした消費者の要求のしわ寄せを食らうのは、言うまでもなく、生産者である農家だ。地域によって異なるものの、農協などが農家に求める品質水準はとんでもなく高くなっているようだ。
曲がっているキュウリが出荷できないのは当たり前。スイカは表面に傷がついていたり、糖度が基準値にわずかでも届かないと出荷できない。もっとも、日本の農産物が世界に評価され、さらにブランド力も維持しているのは、産地ごとにこうした厳しい基準を設けていることの賜物なのかもしれない。
だが、それは農家にとって神経をすり減らす原因にもなる。せっかく生産したのに出荷できない農産物を多数抱えてしまうと、そのぶん赤字を累積させてしまう。秋田県で農業を営む、筆者の友人はこのように話す。
「私たちが生産する農産物は高品質だし、東京の有名な料理店にも納入されているのは誇りでもある。しかし、その品質を守るために、出荷できない農作物もたくさん発生しているのです。ちょっと傷がついた“規格外品”であっても、普通においしく食べることができるんですけれどね……」
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