トランプ氏「カナダ関税戦争」で米経済失速は目前 それでも“中間選挙勝利”の可能性を上げる「仮想通貨・AI・オンライン賭博」の面々
総債務の増加ペースが速すぎる
消費の減速に加え、米国の長期金利の上昇も頭の痛い問題だ。
10年物国債などの利回りが上昇したことを受けて、米財務省は19日、バイバック(長期国債の買い戻し枠)の1回あたりの上限を少なくとも2倍に拡大すると発表した。だが、翌20日に長期金利が再上昇するなど、効果は一時的なものに過ぎなかった。
ベッセント財務長官は20日、根本的なファンダメンタルズ(経済の基礎的な条件)を反映していないと強調したが、長期金利が上昇する理由があるのは明白だ。米国の総債務は2022年1月に30兆ドルを超えたが、米財務省の日次の財政データによれば、今年8月18日時点で40兆ドル(約6320兆円)に達した。
高齢化に伴う社会保障費の増加や年1兆ドル(約158兆円)に迫る利払い費の膨張などが主な要因だが、増加ペースがあまりに速いため、財政危機に連鎖するリスクが高まっているとの警戒が市場に広がっている。
長期金利上昇の悪影響
危機感を募らせるベッセント氏は、トランプ氏らと検討して来週初めまでに財政健全化策を発表するとしているが、実効性のある対策を打ち出せる可能性は低いだろう。中間選挙の勝敗を気にするトランプ氏が、国民に痛みが伴う緊縮策を実行するとは思えないからだ。
だが、長期金利の上昇は、政府の借り入れ負担を重くするほか、住宅や自動車ローン金利を押し上げる。イラン戦争が始まった2月末ごろから、30年固定の住宅ローン金利の上昇は続いている。これが災いして、住宅市場はこのところ急減速している。
ブルームバーグは18日、7月の米住宅着工件数は市場予想以上に大きく減少と報じた。一戸建て住宅の着工件数は前月比9.9%減、集合住宅も17%近く減少しており、「勢いを欠く住宅市場の現状を浮き彫りにしている」と指摘した。
長期金利の上昇は、米国経済の成長の原動力である人工知能(AI)投資にも冷や水を浴びせかけている。大量の社債を発行してAI関連投資を続ける巨大テック企業にとって、長期金利の上昇は自社の借り入れコストの増加につながるからだ。
政治に流れる新興産業のカネ
経済面で逆風が吹くトランプ政権だが、それでも中間選挙で共和党が勝つ可能性はあるようだ。
ロイターは20日、今年の中間選挙は「一握りの億万長者と企業が選挙支出を牽引」と報じた。その主軸として暗号資産(仮想通貨)、AI、オンライン賭博などの新興産業を挙げている。
この記事では企業責任を追及する非営利団体「パブリック・シチズン」のデータも引用している。それによれば、昨年初めからの15か月間でこれら企業が投じた金額は、2024年の大統領・議会選挙に向けた2年間の合計額(約4億6100万ドル)を上回る5億1700万ドル(約822億円)というから驚きだ。
新興産業が政治に資金投下する理由は、規制強化の動きを押し返すことだという。だが、それにより新興産業に関する問題ばかりが注目され、ガソリン価格の高騰や医療費など生活に直結する問題が後回しになるという批判も、記事で指摘されている。
その結果、共和党が勝利することになれば、米国における政治不信がさらに高まるのではないだろうか。中間選挙の結果は今後の米国の行く末を大きく左右する。引き続き高い関心を持って注視すべきだ。
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