別居婚を続けていたら、深夜0時に妻のマンションから上司が出てきた…「僕はピエロだな」屈辱の40歳夫がとった行動
急に里緒さんと娘に会いたくなり…ばったり出くわしたのは
退院後はさすがに連絡なしに里緒さんのところへ行くようになった。それでも里緒さん宅には、母や友人、ときにはベビーシッターもいたりするので、どことなく居心地はよくなかった。
「やっと家族3人でいられる時間がとれるようになったのは、生後半年ほどたったころですね。ただ、新しい部署はけっこう出張が多くて、1ヶ月のうち3日くらいの出張が2、3回入るような状況でした」
ある日、出張帰りの飛行機が大幅に遅れた。終電に間に合わなくなり、空港で30分以上も並んでようやくタクシーに乗った。急に里緒さんと娘に会いたくなった。浩樹さんは、「何かを急に思い立って行動する」ことはめったにない。
「なのに、なんでしょうね。その日に限って、なぜか急にそんな気分になったんですよ。すでに午前0時を回っていたから、里緒は寝ているかもしれない。でもこっそり入ってふたりの寝顔を見たい。翌日が休日だったからそのまま泊まってもいいしと思って行ってみました」
里緒さんが住んでいるのは5階だ。エレベーターが降りてきて、乗ろうとすると中から人が出てきた。誰かが乗っていると想定していなかったので、おっと浩樹さんは体を引いた。「すみませんと言った人を見たら、なんと里緒の上司である課長でした。僕にとっても上司だった人。彼はすでに部長に昇進していましたが、変わらず里緒の上司だった。『どうして……』とつぶやいたら、上司もあわてて『え、きみたち、ここに住んでるの? オレの知り合いがここにいるんだよ』って。用意していたような口調でしたね。『何階の誰ですか』と言ったら答えられなくなった。どういうことなんですかと言ったら、彼は走って行ってしまった」
思えば怪しいところが…
浩樹さんは何を思ったか、里緒さんのところへ行くのをやめて自宅に戻った。衝撃が強すぎて、そのまま里緒さんに会う気になれなかったのだという。
「そういえば僕らがノリで結婚するということになったとき、いちばん喜んでいたのは課長だった。重荷になりかけていた里緒を僕に押しつけられると思ったのだろうか、あるいはふたりとも結婚していれば不倫がうまくいくと思ったのだろうか。結婚後もずっとふたりは会っていたのか。いろいろ考えたけど、もちろん真実はわかりません。その日は一睡もできなかった」
おそらく上司から里緒さんに連絡がいっただろう。翌日昼過ぎ、里緒さんから電話があった。
「これから行っていいかなと。3人でお昼食べようとも。玄関で迎えると、里緒はいつもとまったく同じ感じでした。出張だったんでしょ、お疲れさまと言って。僕がパスタを作り、里緒はその間、娘に離乳食を食べさせていた。バレているとわかっていながら、ああいう言動がとれるとしたら、たいしたものだと僕は里緒を見ながら思っていました」
結局、浩樹さんは何も問いただせなかった。里緒さんも何も言わなかった。それからも変わらない生活が続いた。その間、ずっと「このままではいけない」「こんな中途半端な気持ちでは家族を愛せない」と思いながら、彼は一歩踏み出せずにいた。
「うじうじと悩みながら、父だったらどうするかなと思っていました。母が出ていってしまったとき、父は探そうとはしなかった。戻ってきたから受け入れたけど、決して自分から探してはいなかった。そういう意味では僕も父に似たのかもしれない」
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