竹内涼真、土屋太鳳、堤真一、中井貴一、波瑠…鑑賞者の心にホームラン「夏の甲子園映画」5選

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応援席のドラマ

〇「アルプススタンドのはしの方」(2020年)

 アルプスタンドとは、甲子園球場の内野と外野の間にある席のことで、出場校の生徒たちの応援席だ。名前の由来は、白いシャツで埋まっているスタンドがアルプスに積もる雪のように見えるところから名付けられたという。

 夏の甲子園1回戦。アルプススタンドに、演劇部の安田あすは(小野莉奈)と田宮ひかる(西本まりん)が座る。2人は学校に言われて参加しているだけで、応援にも熱が入らない。そこに元野球部の藤野富士夫(平井亜門)と優等生の宮下恵(中村守里)もやってきた。試合のイニングが進むにつれて、安田と田宮の間のわだかまりや藤野が野球部を辞めた理由、そして宮下の勉強と恋の悩みなどが少しずつわかってくる。

 当初は冷めた思いで試合を観る4人だったが、試合に出られないのに頑張っている野球部員を見て、少しずつ心が動き始める。諦めたくない、どうせだめだと思いたくない。最終回にその野球部員が打席に立つと、いつのまにか声の限り応援していた。

 舞台劇を映画化したもので、試合の場面はなく応援席の会話と吹奏楽部の演奏する様子が中心の異色の“甲子園映画”だ。城定秀夫監督は、その限られた空間と人数で、高校生たちが未来を見つめ直す一瞬を切り取る。ラストに成人になった4人が映される。そこで交わされる会話はとても素敵なオチだ。

 主役はグラウンドの選手だけではない。スタンドにいる生徒たちも、希望と不安を抱えながら生きているのだ。清々しい試合を観終わったような気分になれるだろう。

高校野球と日本社会

〇「甲子園:フィールド・オブ・ドリームス」(2020年)

 第100回夏の甲子園大会(2018年)出場を目指す、神奈川県・横浜隼人高校と岩手県・花巻東高校の監督と球児を追うドキュメンタリー。

 横浜隼人高校の水谷哲也監督は「自分は昭和の頑固親父でありたい」と言う人だ。野球の指導だけではなく挨拶、グラウンド整備、道具の手入れなどを通して生徒の人間形成を目標とする。

 佐々木洋監督は、水谷監督の下でコーチを経験後に花巻東高校の監督となり、菊池雄星、大谷翔平と大リーグ選手を輩出して一躍有名となった。先日、息子の麟太郎がマーリンズ入団を発表したことでも知られている。

 山崎エマ監督は、高校野球を日本社会の縮図と捉え、海外で知ってもらいたかったと言う。自然と規律や調和が身につく高校野球という、日本独特の文化に光をあてたかったのだろう。

 作品は、水谷監督と佐々木監督を対照的な存在として映しだす。昔ながらの指導方法で、選手に愛情を注ぐ水谷監督。一方の佐々木監督は、頭髪の丸刈り廃止を宣言する。「高校野球は古くて良いものもいっぱいあるが、新しいものも取り入れなくてはならない」と。

 当時、強豪校の決断は大きく報道されたが、現在も丸刈りの学校は多い。佐々木監督は「ちょっと驚いています。もっと急速に変わると思っていました」と語っている(「文藝春秋」2026年9月号)。

 日本の高校野球も変わりつつある。それは、世界と繋がることによって変わっていく日本社会と同じだ。変化は古くから続く良さを大切にすることと、進取の気性が折り重なりながら成されるのかもしれない。

稲森浩介(いなもり・こうすけ)
映画解説者。出版社勤務時代は映画雑誌などを編集

デイリー新潮編集部

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