熊本地震の被災者を喰いモノにする“特殊詐欺グループ”の卑劣手口…警察関係者が「火事場ドロボウより許しがたい」と憤る“便乗犯罪”とは
台風シーズン到来
ブルーシートの便乗犯罪が目立ったのは、令和元年の台風15号だが、消費者庁関係者はこう振り返る。
「令和元年といえば、台風19号による甚大な被害が印象的です。千曲川の氾濫や川崎のタワマン浸水による電源喪失など、驚異的な風水害でした。しかしその直前、千葉県を直撃した15号では強風によるゴルフ練習場の鉄塔倒壊と、被災地域全体の屋根という屋根を覆いつくしたブルーシートが衝撃的でした」
この台風15号では、最大瞬間風速57.5メートルという、前例がないレベルの猛烈な暴風が瓦や屋根を広範囲で一瞬にして吹き飛ばし、送電鉄塔の倒壊などで房総半島の大部分が長時間停電する事態となった。千葉県だけでおよそ8万棟超の住宅が損壊。その大半が「暴風で屋根瓦が吹き飛んだ」(同県市原市の住民)という一部損壊だった。全壊が448棟、半壊は4694棟だったのに対し、一部損壊は実に7万7091棟に上っている。
このため、屋根が壊れたまま次の雨を迎えないよう、応急処置のためのブルーシートが大量に必要となり、県が国の援助分も含めて被災地に備蓄品20万枚以上を放出したものの、追いつかない深刻な不足事態に陥り、「空前のブルーシート需要が生まれた」(同警察関係者)。そこでブルーシート設置に関する便乗商法や、悪質業者のトラブルが続発する一方で、業者の修理待ちで屋根がブルーシートに覆われたまま、放置された住宅が続出する結果となった。
全国の消費生活センターへは、台風が発生した9月5日からの1週間で279件、12日から18日に375件、19日から25日で362件、26日から10月2日で328件の相談が寄せられた。警察庁幹部はこう話す。
「今回の熊本地震後は熊本南部が台風13号の暴風雨域に入ったことで、ブルーシートの設置作業が強風で阻まれる事態もありましたが、影響が懸念されるのはむしろこれからです。被災地が復興に時間を要することは間違いなく、台風シーズンの到来で悪質商法や詐欺のターゲットにされる可能性があるとみて、警戒しています」
令和の新定番とは
今回の熊本地震で警察庁は「地震に便乗した不審な電話、SNSや訪問に注意!」と書かれたチラシを作製。早い段階からの啓発に力を入れている。「その中でもキーワードが、チラシにも掲げた『SNS』なんです」(同幹部)。警察庁では熊本地震の発生を受けて、インターネットを通じた二次被害に注意を呼び掛けているが、「その手口はホップ・ステップ・ジャンプの3段階に分けて説明できます」(同前)。
能登半島地震では、SNSを悪用し、(1)慈善団体や被災地の支援者、被災者の身内、被災者本人を装う(2)義援金や募金、“投げ銭”を呼びかける(3)PayPayなどQR決済を中心とした電子決済やネットバンキングを通じた送金、キャリア決済――といったかたちで詐欺被害に誘導する投稿が大量に確認された。これを教訓に警察庁は、熊本地震発生直後から全国47都道府県警へ向け注意喚起を行い、警戒を強めている。
前出の警察関係者は「警察として把握した疑わしい募金などの悪質な偽情報をSNSのプラットフォーム事業者に提供して、即座に削除してもらうための専用窓口も設けている。日本赤十字社をかたる偽メールなど“なりすまし”とみられる義援金メールも既に複数確認している」と明かす。また前出の消費者庁関係者も「X(旧Twitter)で『母と連絡が取れない』などと嘘を投稿し、QRコードを使って金銭を詐取しようとする募金詐欺を複数確認しています」と打ち明ける。
冒頭の閣議後会見では、大臣と同席していた警察庁の楠芳伸長官が特殊詐欺、投資・ロマンス詐欺について「令和7年中の被害額は前年比約64%増の約3257億円と過去最悪となり、本年上半期の被害額も約1816億円、1日当たりの被害額が約10億円となるなど被害の拡大に歯止めが掛かっておらず、極めて危機的な状況」と言及した。拡大の一途の特殊詐欺被害を前に、被災地を狙った犯行を抑え込むことができるのか。警察の真価が問われていると言えそうだ。
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