「プーチン大統領」が抱える“深刻なジレンマ” 「やめられない戦争」で支持率低下、与党は選挙惨敗危機 同盟国からも「戦争凍結」を進言され
地球の4分の3にあたる長距離移動をこなす
プーチン氏はこの夏、集中的に地方訪問をこなしている。下院選を前にしたテコ入れという狙いもあるだろう。7月下旬には先のカザフスタン大統領と会談したシベリアのオムスク州とイルクーツク州、8月上旬にクラスノヤルスク州を訪問した。今回、サハリン州に来る前にもノボシビルスク州に立ち寄っていた。
モスクワからシベリア主要都市へのシャトル訪問は、往復距離にしてざっと計算すると約2万8400キロ。プーチン氏はこの1か月で地球一周の4分の3にあたる長距離移動をこなしていた。
実は、北方領土への訪問もすでに織り込み済みだった。対露制裁の度合いを高めるウクライナ支援国の日本を見限り、2024年1月の時点では「必ず訪れる」と将来的な訪問を約束。2024年6月にも「ロシアが主権を持つ領土だ」と念を押していた。
次の焦点は…
ウクライナ支援国の日本へのけん制に加え、ロシア国内の愛国的な世論を刺激する上で最も理にかなった訪問時期は、第二次世界大戦の対日戦勝記念日である9月3日という見方が成り立つ。
さらに、モスクワから遠く離れた北方四島を訪問するには、極東の経由地を経なくてはならない。気候を考え、これまでの主要閣僚の四島訪問も夏が多い。しかし、千島列島には霧が立ち込めることが多く、航空便が欠航することも少なくない。視界不良が原因で事故に遭うリスクも高まる。
プーチン氏が択捉島を訪れた日は、例外的に天候に恵まれた。13年ぶりのサハリン州訪問であり、今回は安全性を考え、太平洋艦隊の旗艦ヴァリャーグに乗艦しての渡航だったが、もし四島が悪天候だったら、島への上陸が見送られた可能性は否定できない。
泥沼状態にあるウクライナとの戦争で勝利を最優先する判断が、政治、経済、社会の様々な方面にしわ寄せを起こし、国家に大きな歪みをもたらしている。
次の焦点は、9月20日に投開票を終えるロシア下院選の結果だ。内憂を抱えるプーチン氏は、戦況の好転で得点を稼ごうとする恐れがある。多くの民間人が犠牲になるウクライナへの猛攻撃が懸念される。しかし、その判断でさえ、プーチン政権の求心力を保てるかどうかは未知数だ。
「私の確信しているところでは、今、起きていることはロシアとウクライナ両国にとっての敵の思うつぼであり、彼らをも喜ばせている」
プーチン氏に直言したカザフスタンのトカエフ大統領の言葉が重く響く。ロシア社会の戦争への疲労感、厭戦気運に効く特効薬は尽きかけているように思える。
【後編】では、戦争の長期化によって、ロシア国民の心がいかに蝕まれているかについて記している。ロシア社会で急増している3つの「心の病」とは――。
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