「本当に怖いのは「ムセない誤嚥」 誤嚥と肺炎を防ぐ「のど筋トレ」の方法とは?
肺炎を疑われる状態になってからでは遅い
厚生労働省が発表した2024年の統計では、日本人の死因は多い順に、悪性新生物(がんなど)、心疾患(心筋梗塞など)、老衰、脳血管疾患(脳梗塞など)、肺炎、誤嚥性肺炎と続きます。誤嚥性肺炎だけでも6万人を超える方が命を落としていますが、老衰か、肺炎か、誤嚥性肺炎かの診断基準はいまだ明確でなく、実際には、誤嚥性肺炎で苦しんでいる人はもっと多いと思われます。
“肺炎は老人の友”という言葉もありますが、“友”なんて生ぬるいものではありません。そもそも高齢者の多くは体力が低下していますから、ささいなことが発端となって肺炎を発症するケースが少なくない。それだけ「誤嚥」「肺炎」は高齢者にとって身近で切実な問題です。肺炎を疑われる状態になって気付いたのでは遅過ぎます。
人間の生きる力
ここまで読まれて、少し怖くなった方もいるかもしれません。でも、ご安心ください。本稿でお伝えしたいのは恐怖ではなく、むしろ希望が持てる話です。
以前、私の病院に来られた80代男性・高橋さん(仮名)のケースです。脳卒中の既往があり、約1年前から食事のたびに激しくムセ、夜は痰がからんで眠れないと嘆かれていました。複数の病院で打つ手ナシと見放され、体重も10キロ落ち、もはや栄養失調に近い状態。一緒に来ていた娘さんも「食事はもう無理かも」と覚悟していました。
私はまず食事の形をおかゆに変えて、液体にはトロミをつけるよう指導し、痰を切る薬を処方しました。その上で、これからお伝えする「のどの筋トレ」を、毎日続けていただきました。嚥下の力、すなわち「飲み込む力」こそ人間の生きる力だと信じていたからです。
その効果はテキメンでした。わずか2カ月後に再訪されたお姿は、まるで別人のよう。食事ができるようになって体重が戻り始め、「先生、お刺身が食べられました」とご報告されたのです。隣で見守るご家族の目にも涙がにじんでいました。高橋さんは、余命いくばくもないのではと思えた状態から約10年も健康に生き続けて、天寿を全うされました。
これは、決して特別な症例ではありません。私は何十、何百という患者さんたちの奇跡を見てきました。医師だった私の実父もそうでした。90歳を過ぎた父は、朝ごはんの最中に誤嚥でムセると「おお、いかんいかん」と言いながら後掲の「嚥下(えんげ)おでこ体操」を、そのまま食卓でやっていたのです。
誰にでも、のどの衰えはやって来ます。けれど、気付いたその瞬間に手を打てば、何歳になってものどの筋肉は鍛え直せる。患者さんや父と過ごした時間が、私にそう教えてくれました。
さて「のどの筋トレ」の前に、いくつかチェックをさせてください。ここまでお話ししてきた内容もありますが、再確認してみましょう。
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