九州・沖縄地方の塾の勢力争い――北と南の二強、流入する関西資本、地元名門塾の“三つ巴”

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 本州から関門海峡を越えた先に広がる九州の地では、独自の教育経済圏が根付く。福岡発の「英進館」と鹿児島発の「昴」が九州各県で激しくぶつかり合う傍ら、本州からの“刺客”や地元に古くから根付く名門塾が三つ巴の体をなす。その前線は、中学受験市場の拡大が著しい沖縄にも広がり――。(西田浩史/教育ジャーナリスト、追手門学院大学客員教授、学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長)

 ラ・サール、久留米大学附設という超名門中高一貫校を頂点に、修猷館、熊本、鶴丸、長崎西、大分上野丘といった公立校など、名だたるトップ中学・高校が並ぶ九州。これらの合格実績こそが、長年、学習塾の序列を決める絶対的な物差しとなっている。

 各県に根付く名門塾はあるが、九州における勢力争いの中心は、北の英進館と、南の昴に他ならないだろう。この二強を筆頭に、上位層の受験市場は活況を呈している。また少子化によって中堅層をメインターゲットとした塾の教室閉鎖や統廃合も目立ちつつあるが、上位層の生徒の絶対数も減っていくことを見据え、これまで塾の利用者が限られていた中堅層をいかに取り込むかが同地域の塾にとっての重要課題となりそうだ。

九州最強の「英進館」

 まずは福岡。なんといっても九州最大手である英進館の勢いが際立つ。筆者が九州地区の32塾、延べ65名の塾関係者への聞き取り調査(2026年1~2月実施)を行なったところ、「英進館に乗り換える塾生が増えている」「自塾の社員の間でも英進館の指導力や合格実績のすごさが話題になっている」など、なんと93%が何らかの形で英進館の台頭を体感しているという結果となった。

 同塾を率いるは、久留米大附設中高から東京大学工学部、さらに入学し直した九州大学医学部を首席で卒業した異色の経歴を持つ筒井俊英社長。経営者の立場では珍しく、今でも入塾説明会で自ら講演したり、講師として現場に立ち続けていたりする。

 福岡が誇る超名門中高一貫校である久留米大学附設中に毎年100人を優に超える合格者を輩出していることをはじめ、鹿児島のラ・サール、そして関西の灘、西大和学園など、最難関中学の合格実績においても九州トップ。そして修猷館、福岡、筑紫丘など県内の公立トップ高校の合格者の大半を英進館が占めるなど、完全に一強状態だ。

 英進館が武器とするのが、「模試」である。西日本最大規模の一斉学力テストや、有力校に特化した模試など手広く展開。こうして得られたデータが合格可能性を正確に数値化し、志望校選択を左右する重要指標となる。学校側も大いに参考にするため、進路指導にも強く影響している。いわば「データをもとに生徒の受験校を動かせてしまう」わけで、そのデータ力とブランド力ゆえに、上位層が必然的に集まってくる体制になっているといえる。トップ層の成績データを最も多く握る英進館の地位は盤石だ。

 ただ福岡には他にも有力な塾はある。そして英進館は、九州各地で各県の名門塾との激しい争いを繰り広げ、さらに南の「昴」とは二強争いの体を成している――。

〈新潮QUEでは、塾や予備校が繰り広げる熾烈な勢力争いについて、全国を10のエリアに分けて図解した「勢力マップ」を公開中。九州・沖縄編では、九州の広域にわたる英進館vs昴の争いのほか、福岡、佐賀、大分、鹿児島、熊本、宮崎、長崎、沖縄それぞれの塾事情、そして同地域の塾ビジネスの行く先などについて、オリジナルの図を交えながら詳述している〉

デイリー新潮編集部

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