「将来的に年約2500億円という莫大な金額に…」 三井物産「鉄鉱石事業」爆発的収益力の秘密とは

ビジネス

  • ブックマーク

世界最大級の未開発鉄鉱石鉱床

 5大商社の中でも、資源分野で盤石の強さを誇る三井物産。同社の代表的事業である鉄鉱石ビジネスの現場とは――。

(2026年7月28日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました)

 ***

 総合商社の専門誌「週刊ブレーンズ」編集長の小淵良樹氏によると、

「資本市場ではどうしても、短期間で利益に結びつく投資案件が評価されやすい傾向があります。しかし三井物産は、早期に利益貢献が見込める新規投資を積み上げるのと同時に、収益化まで一定の時間を要する大型案件にも継続的に資本を投じてきました」

 2030年以降に花開く巨大投資案件の代表が、豪州の鉄鉱石事業「ローズリッジ」と、UAEの「ルワイスLNG」だという。

「中でも『ローズリッジ』は、三井物産が同社として過去最大となる約8000億円を投じて権益の40%を取得することを発表した世界最大級の未開発鉄鉱石鉱床です。25年12月には権益取得を完了するとともに、鉱山開発に向けた本格的な事業性調査への移行を決定しました。事業性調査は29年内の完了を見込み、30年までの生産開始を予定しています」

 と、小淵氏は話す。

「初期生産能力は年産4000万~5000万トンを見込んでおり、基礎営業キャッシュフローへの貢献額は、年産4000万トン体制で年間1000億円規模、将来的な年産1億トン超体制では年約2500億円という莫大な額が見込まれます。長い期間をかけて地道に仕込んできた大型案件が持つ爆発的な収益力には凄まじいものがあります」

 三井物産の堀健一社長はローズリッジのことを「ピルバラ地域に残されたクラウンジュエル」と表現している。

「68億トンという世界最大規模の資源量に加え、豪州最高クラスの鉱石品位、実績豊富なオペレーターとの提携、既存インフラの活用による低コスト・低リスク運営を期待できる点が大きな強みです」(小淵氏)

 さらに、豪州はカントリーリスクが低く、長期にわたる資源開発を進める上でも極めて有利な事業環境だという。

「三井物産は2000年代から同権益の取得を目指し、20年以上にわたってオーナー一族との信頼関係を粘り強く醸成し、権益取得を実現しました。1960年代から豪州で鉄鉱石事業を手掛け、長年にわたって知見と実績を積み重ねてきたことに加え、00年代以降は保有事業の大規模拡張を通じ、リオティント、ヴァーレ、BHPの鉄鉱石3大メジャーと強固なパートナーシップを築いてきたことが、世界有数の希少案件の獲得を支えたと言えます」(同)

 三井物産の代表的事業ともいえる鉄鉱石。それに携わる社員たちが見る光景とはいかなるものなのか。

「周囲を見渡せば、そこにはひたすら赤土の大地が」

「ローブリバー」は、三井物産が「ローズリッジ」と同じく豪州で手掛ける鉄鉱石事業である。最大株主も「ローズリッジ」と同じ「リオティント」で53%。三井物産の権益は33%だ。

「『ローブリバー』はオーストラリア北西部のピルバラ地区にあります。僕らの駐在拠点がある南西部のパースは温帯で過ごしやすい都市でしたが、ピルバラはそこから北に1100キロ、国内線で2時間飛んだところにある灼熱の地でした」

 12年1月からオーストラリアに駐在し、13年10月末に退職するまでの約2年間、三井物産の社員として「ローブリバー」の事業に携わった「Space BD株式会社」代表取締役社長の永崎将利氏が述懐する。

「ピルバラ行きの国内線は鉱山に向かう大柄な作業員たちで埋め尽くされていました。彼らの熱気に囲まれながら、僕ら三井物産の社員たちは、後ろの席でちょこんと、肩身を狭くして座っていました」

 ピルバラの夏は気温がゆうに40℃を超え、時には50℃に迫る日もあった。

「もう暑くて暑くて仕方がなかった。周囲を見渡せば、そこにはひたすら赤土の大地が広がっていて、まさに“土漠”という表現がぴったりでした。とても人が住めるところではありません」(同)

次ページ:巨大なスタジアムのような採掘場

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。