妻の親友と不倫した46歳夫 「賢すぎて、なかなかつついてこない」妻との結婚は、32歳の誕生日に出されたビーフシチュー
僕が普通で彼女が大雑把すぎる
翌日、彼は婚姻届をもって彼女の部屋を訪れた。結婚式はともあれ、婚姻届は早く提出したかった。親への紹介はあとにして、とにかく届を急いだのは、のちに生まれてくる子に、「おとうさんとおかあさんは結婚する前に妊娠したの?」と言われないためだった。そんなことを気にする必要はないと郁美さんは言ったが、孝次さんは子どもに不信感を抱かせたくないと思った。「細かいなあ」と郁美さんは苦笑したという。
「郁美とつきあってみて、彼女に比べれば僕は意外と神経が細かいんだとわかりました。というか、僕が普通で彼女が大雑把すぎるんだと思うけど。ただ、その大雑把さが僕には気楽でしたね」
その後、双方の親きょうだいに紹介するため一席もうけた。友人たちは結婚パーティを開いてくれたのだが、パーティをそれとなく仕切ったのはやはり郁美さんだった。
「自分たちの来し方を紹介したり、馴れそめとかつきあっている過程でのできごとなんかをおもしろおかしくしゃべり倒していました。僕の浮気疑惑なんていうコーナーもあったりして、些細なことから浮気を疑ったこともあったと。僕はそんな彼女の気持ちを知らなかったからびっくりしました。彼女の友人たちが披露するエピソードも、郁美はこう見えて繊細な心の持ち主だというものが多くて、僕は彼女をわかってないなと思った。でも結婚してからわかっていけばいい。楽しみが増えたと思うことにしたんです」
女3人に囲まれて
32歳のとき長女が、その3年後に次女が生まれ、彼は女3人に囲まれることとなった。郁美さんは仕事を続け、ふたりは多忙な日々を送ったが、そこは郁美さんがリーダーシップを発揮し、「うまく僕の母を巻き込んだ」そうだ。
「彼女は裏がないので、僕の母に『すみません。助けてください』と率直に頼む。母はおせっかいで頼られると断れないタイプだから、よく駆けつけてくれました。そうすると郁美は次の週末に母を招待して手料理を振る舞う。誕生日や母の日は、母に似合うスカーフやネックレスなんかをプレゼントしていました。母は娘がほしかったけど授からなかった。兄は結婚していましたが遠方にいたし、兄の妻とはあまり合わなかったみたい。弟は独身。だから母はすっかり郁美のことが気に入っていた。でも必要以上に介入させないのが郁美のうまいところなんですよ。そこはしっかり線を引いて、でも母には線を引いたとわからせずにうまくやっていた」
すごいなあと孝次さんはいつも思っていた。相手に嫌われずに頼みだけ聞いてもらう。もちろんそれに見合うお礼はするが、相手はそれを「お礼」というより彼女の誠意だと感じる。もちろん郁美さんは意図的に計算して、そうしているわけではなさそうだった。だから彼女としては誠意を尽くしているのだろうが、結果的には「人につけ込まれることをきちんと回避」している。そこに孝次さんは感動すらしたという。
「子育ても、ある意味、大雑把だったけど子どもたちはのびのび育ちました。彼女が公園で子どもを遊ばせているのを見ると、子どもが転んでも大きなケガがなさそうなら、見ているだけ。『こっちおいでー。おやつ食べよう』なんて言うわけです。子どもはおやつほしさに起き上がってくる。転んだことは帳消しになる。服をパンパンと手で払って、痛いところはないか確認して終わり。ことを大げさにしないというのかな、あらゆることにおいて彼女はそういうやり方をしていましたね」
よほどのことがない限り、事態を大きくせずに終わらせる。転んだ子は、転んだことなど忘れておやつを食べていた。些細なことをオーバーに表現する人もいれば、案外大変だったことをさりげなく流す人もいる。郁美さんは明らかに後者だった。孝次さんの目には、それが「かっこいい」と映った。
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ますます郁美さんに信頼を寄せる孝次さん。記事後編では、そんな妻の親友をきっかけに、孝次さんの心に生じた変化を紹介している。
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